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No.38

デメーテルのゴボウ

 ○…ギリシャ神話に出てくる農業の女神・デメーテルを彫り込んだ鐘をイタリアから輸入し、今夏には帯広市基松町の所有畑の真ん中に立てる計画をしているのは日本一のゴボウ農家、和田政司氏(66)=写真。ノーベル賞作家・ヘミングウェーの小説「誰がために鐘は鳴る」(1940年著)ではないが、「だれのための鐘?」という疑念が生じた。

 ○…2000(平成12)年5月2日、交通事故で突然、両親を失った。種まきを控えた農繁期、3年前に設立したばかりの有限会社はまだ軌道に乗っていなかった。当時47歳の和田氏は、慟哭(どうこく)の中、命がけで働いた。父から引き継いだ16ヘクタールの農地は現在、120ヘクタールに拡大した。ゴボウだけで38ヘクタール、収量は十勝産の約10%、年間800トン。

 ○…品質は「香りが良く、甘く、柔らかい」と、定評がある。おいしさの秘訣は「ミネラルを十分含んだ健康な土をつくること」(和田氏)。大量の海藻、カニの甲羅、エビの皮、米ヌカを混ぜた堆肥を発酵させて造り、投入する。「ゴボウは、料理の主役ではないが、味を出す功労者だ。“名脇役”を育ててくれる土に感謝をして、鐘を鳴らす」(和田氏)のだそう。(会長主筆・林光繁)

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