小麦ヌーヴォーあす解禁 広がる2年目
収穫した年の新小麦で、全国のパン店がパンを作る取り組み「とかち小麦ヌーヴォー」が2年目を迎えた。今年産の解禁日は23日で、昨年の約200店を上回る全国約320店舗が参加する。課題だった管内の店舗も昨年の4倍となる1市7町の計20店が参加し、新たな恒例イベントとして定着するか注目される。
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「小麦にも旬がある」という新たな楽しみ方を提唱するのは、生産者、パン店、農産物卸のアグリシステム(芽室町)でつくる小麦ヌーヴォー委員会(委員長・伊藤英拓アグリシステム専務)。「ヌーボー」はフランス語で「新しい」を意味し、産地と消費者の確かなつながりづくりを目指している。
毎年解禁が話題となるワインの新酒「ボージョレ・ヌーボー」と同様に解禁日を設定し、23日から各店で発売を開始する。同日午前11時半から、帯広競馬場内とかちむらで「解禁祭り」を開き、先着300人に「乾杯用」のパンを配布する。生産者と消費者がともに新麦の実りを祝い、管内参加20店のパンを即売する。
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昨年は、首都圏など食に関心の高い消費者が多い都市圏での販売やイベント開催は好調だったが、十勝は5店のみの参加。主催者側は「参加するメリットを十分感じてもらえなかったのでは」と、今年はPR活動に力を入れている。
今回初めて参加した十勝ベーグル(帯広市)の瀬川寛人さん(37)は「生産者と消費者のパイプ役になることで、もっとすてきな店づくりができるのでは」と期待する。同店では主催者から毎月送られる小麦の生育の報告を、来店客の目にとまるよう掲示している。「十勝産の価格が手の届く範囲になってきた」ことも参加の一因だという。
2年連続で参加する旭屋商店(芽室)の中島将好代表(43)は「昨年は発売から1週間はお客さまの反応も良かったが、定着はまだまだ」と仲間のパン店に参加を呼び掛けてきた。
中島さんは新小麦について「輸入小麦は毎年同じ品質。毎年違う十勝の小麦に向き合うのが、職人の技術向上につながる」とみる。作ったパンは「大手やコンビニには作れない」と胸を張る。ヌーヴォーによる他店との差別化は、参加店増加の一因ともなっている。
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ヌーヴォーは生産者の意識も変えつつある。小麦を提供する芽室町の畑作農家島部亨さん(54)は「輸入小麦と混ぜるのが普通だった以前から変わり、道産が消費者PRになる時代になってきた」と歓迎する。
近年は十勝で主力の中力品種に加え、製パン製に優れた強力品種も多く登場。小麦はブレンドで真価を発揮するため、島部さんら生産者は手間のかかる多品種栽培に取り組む。本別町の畑作農家・小島裕之さん(42)も「生産は難しいが、パン店からほしいと言われたライ麦にも挑戦したい」と意気込む。
昨年の「解禁祭り」に参加した消費者からは「新麦は味わったことがなく新鮮」「取り組みを初めて知った」という声が多数寄せられた。主催者の伊藤委員長(33)は「消費者の認知をどう広げていくか。ただのイベントでなく、お互いに尊重するつながりをつくるという本質を、いかに伝えていけるかが大事」と話している。(眞尾敦)
◆とかち小麦ヌーヴォーについて
・とかち小麦ヌーヴォー-公式ホームページ