耕土興論「和多田進(ジャーナリスト) 東京日記(553)器(うつわ)」
前田夕暮に〈秋の朝卓の上なる食器(うつわ)らにうすら冷たき悲しみぞ這ふ〉がある。食器ひとつの中に悲哀の感性を宿しているのは、ひょっとしたら日本人だけなのではあるまいか。あるいはまた、辞引きを眺めていると〈よかるべきうつはには位をのぼせ、あしかるべきには、いさめてことの限りをつくす〉(『歌林四季物..
前田夕暮に〈秋の朝卓の上なる食器(うつわ)らにうすら冷たき悲しみぞ這ふ〉がある。食器ひとつの中に悲哀の感性を宿しているのは、ひょっとしたら日本人だけなのではあるまいか。あるいはまた、辞引きを眺めていると〈よかるべきうつはには位をのぼせ、あしかるべきには、いさめてことの限りをつくす〉(『歌林四季物..