耕土興論「外岡秀俊(ジャーナリスト) 半藤さんの『粋』」
小学生の頃、家にあった雑誌をめくっていたら、巻頭の小さな随筆が目に留まった。 「私の郷里で柿を収穫する時は、枝に二つ実を残す。一つは鳥、一つは旅人のために」 札幌生まれで、柿の木を見たこともないのに、想像の中で細い枝先に残る二つの赤い実の光景は、子ども心に旅情と風情を誘った。 そんなこと..
小学生の頃、家にあった雑誌をめくっていたら、巻頭の小さな随筆が目に留まった。 「私の郷里で柿を収穫する時は、枝に二つ実を残す。一つは鳥、一つは旅人のために」 札幌生まれで、柿の木を見たこともないのに、想像の中で細い枝先に残る二つの赤い実の光景は、子ども心に旅情と風情を誘った。 そんなこと..