農に向き合う～農業経営部会会員紹介「芽室・アグリシステム」
「オーガニックを四本目の柱として主軸の一つとして伸ばしたい」と話す伊藤英拓社長（アグリシステム提供）
１．栄養丸ごとの「小麦全粒粉」を製造
１９８８年、ホクレンに勤務していた伊藤英信氏（現アグリシステム代表取締役会長）が、雑穀卸業者として創業。「生きた土・健全な作物・人間の健康」を理念に、持続可能な環境保全型農業を目指して、契約農家とともに土づくりや栽培技術の向上に取り組む。
現在は、農産・製造・販売の各部門で、生産・農業コンサル・製造・保管・小売りなどを展開する。中でも２００９年に始めた製粉事業では、外皮のみを取り除くピーリング技術で、ふすま臭を抑えた石臼挽きの「全粒粉」に力を注ぐ。これにより、小麦の栄養が丸ごと取れ、「高品質で風味が豊かな小麦粉」を提供し続ける体制を構築した。
全粒粉は、同社とともに土づくりに取り組んでいる十勝、空知、上川など、道内各地の契約栽培農家（約５００件）が作った小麦１００％を使用。生産から加工、流通、消費に至る履歴管理（トレーサビリティー）が明確なものだけを用いているほか、プレハーベスト（収穫直前農薬）、ポストハーベスト（収穫後農薬）、ネオニコチノイド系農薬も不使用だ。
そして、フィルドマン（栽培指導員）が契約農家をサポート。土作りや栽培技術指導などを通じて、契約農家とともに安全で高品質な農作物の生産、環境保全型農業の実現に力を注ぐ。
代表取締役社長の伊藤英拓氏（４０）は、「栄養価が高く、味わいや香りに深みがあるのが全粒粉の魅力」と強調。特に「ゆめちから全粒粉」は、タンパク値が高く、ブレンド率を高めても「しっかりとボリュームが出て、製パン加工適正が高い」（英拓氏）とする。
２．「地域循環型経済の実現」へ同友会加入
北海道中小企業家同友会とかち支部には、先代時の１９９０年に入会。英拓氏自身も「農業経営部会に関心があった」ため、多忙を極める中でも活動を続け、他会員らから「新たなことに挑戦する気概を学んでいる」と話す。
２０１９年１２月に２代目代表取締役に就任した英拓氏は、伊藤英信代表取締役会長の長男。就任時に「健全な農業・食・健康・自然環境を未来の子どもたちに引き継ぐため、生産者と一体となって環境保全型農業に取り組む」との決意で舵を取る中で、「生産者と企業経営者との連携による地域循環型経済の実現」に向けて、同友会の中でも活動を続ける。
３．有機農業の栽培技術確立目指す
同社では、安全な食の地域循環を目指し、また、未来の子どもたちのために、「オーガニックの普及によって、地球環境に関するあらゆる問題を解決する」との考えのもと、創業当初から活動を続けてきた。
そして、「バイオダイナミックファームによる環境再生型農業を実施・研究する」ことを目的に、２００６年には有機栽培農業法人として、グループ会社「トカプチ」を設立。
「自ら有機農業を実践し、栽培技術を確立・蓄積した上で、サポート体制を作る」（英拓氏）ことを目指して、道内４カ所で３７０ヘクタールの農地を取得して運営。畑作、米、畜産、酪農に取り組む。
同社によると、十勝の農家戸数（約５０００戸）のうち、有機日本農林規格（ＪＡＳ）の認定有機農家は、わずか４０戸程度。同社では、北海道内の自社農場で２０３９年までに耕地面積１０００ヘクタールの有機圃場実現も構想に掲げており、生産・加工・販売までの一貫した体制で、北海道オーガニック食品のブランド化と販路拡大を目指している。
４．オーガニックのアンテナショップで普及
アグリシステムは、英信氏が「オーガニックを日本で普及させるため」に立ち上げた企業だ。英拓氏は、「低コスト・高品質・環境保全型農業、そして、高収益を結び付けることが『オーガニック農業が持つ可能性』」と強調する。
アグリシステムは現在、「小豆３割、大豆３割、小麦・小麦粉３割、オーガニック関連・その他１割」の売上構成となっている。１２年かけて、小麦が主軸の一つに成長したが、英拓氏は、「オーガニックを４本目の柱として、主軸の一つとして伸ばしていくのが今後の課題」とも話す。
生産と流通の体制については「ある程度、構築できたが、今後の課題は消費者の理解」（伊藤社長）。アンテナショップの役割として、グループ会社の自然食品店「ナチュラル・ココ」を２００５年に設立し、有機ＪＡＳ認証を取得したオーガニックパン工房「風土火水」（西１０南１）も２０１５年に開店。「生きた土・健全な作物・人間の健康」の創業理念に基づき、オーガニック農業の普及に全力を注ぐ。
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