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農に向き合う~農業経営部会会員紹介「幕別・若山農場」

「安心して食べられる作物を通して人を幸せにしたい」と語る若山さん

1.さらなる発展に向け法人化
 幕別町古舞で1906(明治39)年から続く畑作農家。耕作面積は50ヘクタールで、小麦、ビート、ジャガイモ、ナガイモ、小豆、大豆を生産している。

 5代目の若山貴弘さん(37)は2018年、父の和幸さん(64)から経営移譲。両親と妻の4人で営農しているが、農場をさらに発展させていこうと、翌年に法人化。取引の信頼度を高め、将来人手が必要になる可能性も考え、決断した。若山さんは、「家庭と事業が明確に分けられ、経営が見えやすくなった」と話す。

2.ボクシングの減量経験が原点
 経営理念は「信頼への取り組みを通して、食べる喜びを創造していく」。

 若山さんがそう思うきっかけになったのは、ボクシングに打ち込んでいた大学時代のこと。プロボクサーになり、試合前には厳しい減量を経験した。試合を終えて、お腹いっぱいに食べられた時に得られた、体が温まるようなパワーと幸福感。その時、多くの人に安心して食べられる作物を提供し、食べることで人を幸せにしていきたいと、就農への思いを強くした。けがに悩まされ、リングに立ったのは1度きりだったが、「たった1回の体験が、自分の将来に大きなインパクトを与えた」と振り返る。

 安全安心な作物の生産を目指す中で、「どのように安全であることを証明できるか」と考えてきた若山さんは、第三者に農場の審査を受けるJGAP(農業生産工程管理)認証を17年に青果物、18年に穀物で取得した。出荷先や消費者への安全性の証明だけでなく、土作りや施肥・農薬管理を徹底し、家族経営でも基準や計画を可視化したことで、品質の向上や作業の効率化につながった。「JGAPは安全安心の根拠として、自信になっている」と手応えを感じている。

3.GAP認証を後押しした同友会活動
 この5年間でJGAP取得、経営移譲、法人化と、さらなる発展に向けて、土台を固めてきた若山農場。取り組みを進めてこられた背景に、同友会の活動があった。

 経営について学ぼうと20代の半ばから農業経営部会の例会などに参加しており、14年に入会。これまでは同じ地域内の農家との限られた情報交換しかなかったが、十勝管内のさまざまな農業者や経営者と出会えたことで、栽培方法など新しい発見も多かった。GAPや食品衛生管理のHACCP認証について学ぶ、部会内の「農業マネジメントグループ」でも、取得している農家に認証のメリットや実体験を具体的に見聞きできたことが、取得を考えていた若山さんの背中を押した。現在はグループ長を務め、視察やセミナーを企画している。

 「同友会には経営の手腕に限らず、人間性において、あの人みたいになりたいと思える経営者がたくさんいる」と話し、活動の中で刺激を受けてきた若山さん。農業経営部会の幹事も務めており、「多少忙しくなったが、それ以上に得るものが多い」と実感する。

4.おなかいっぱいになる喜びを
 「良質なものを安定的に生産し続け、信頼される農家・農場・農産物であり続けること」を目標に掲げる。

 安定的な生産への取り組みの一つとして、今年からビートを移植栽培から直播栽培に変え、コストの削減や作業負担の軽減につなげる。さらに、新たな作物への挑戦も目指していくという。

 若山さんは、「良質な作物を独りで目指していても何も変わらない」と話し、今後も対外的な活動を通して、同じ志を持つ仲間を増やし、周りを巻き込んでいくつもりだ。「おいしい、元気が出る、健康になる、おなかがいっぱいになる。そういった喜びを世の中に提供し続けていきたい」と力を込める。


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