養殖ウニ初出荷 広尾漁協 3年かけて育成、種苗・餌も完全自前
【広尾】広尾漁協(亀田元教組合長)は10日、広尾町の十勝港で養殖試験事業を進めていたエゾバフンウニを初出荷した。30年以上前から続けるウニの種苗生産技術を生かした上で、餌となるコンブも養殖。広尾の海洋資源のみで約3年かけて育てた完全養殖ウニとなる。同漁協では、ウニ養殖漁業を沿岸漁業などと並立させ、今後の継続的な出荷を見据えている。(松岡秀宜)
同漁協はウニ資源の維持増産を目的に、30年以上前から町音調津で種苗を生産し、稚ウニの放流事業を続ける。近年は秋サケやシシャモなどの主力魚種の漁獲量が低迷する中、沿岸・沖合資源に依存しない「つくり育てる漁業」を新たに推し進めるため、2021年6月から、自前の種苗を用いたウニ養殖試験事業を進めてきた。
道の地域づくり総合交付金や町補助金を活用した試験事業では、広い静穏域となる十勝港内に増殖施設を設置。既存のコンブ漁場に影響が出ないよう、餌のコンブを作る養殖施設も併設した。当初は21年からの3年計画も、初年度は道東の太平洋沿岸沖で発生した赤潮(21年9月)で全滅。計画を1年延長した。
その後、22年3月に約1万6000個、23年4月は約3万4000個、24年7月には約2万個の種苗を増殖施設に投入。十勝総合振興局十勝地区水産技術普及指導所(広尾)のサポートを受けながら、関下啓史郎理事を中心に組合員が飼育管理してきた。
今回、出荷されたのは22年3月投入分。生き残った約4000個(約120キロ)は実入りが不十分だったため、昨年12月から種苗生産施設で集中的に給餌。出荷可能な状態になるまで成長させたという。
10日には、漁協関係者らが養殖ウニの殻を割り、実入りや品質などを確認。その後、1キロ当たり5720円、計104キロが落札された。
同漁協の角井雄二専務理事は「出荷サイズに成長し、実入りも良いウニとなった。(初出荷は)大きな一歩」と強調。同漁協では、種苗を生産しながらコンブも促成栽培するウニ養殖技術を、未来志向の取り組みとして確立させたい考えだ。