「帯広メロン」来たれ若手生産者 手間で戸数減、出荷過去最少
肉厚で爽やかな甘みが特徴の「帯広メロン」の生産数が減っている。ピーク時は農家20戸以上で7000玉ほどを作っていたが、今シーズンは3戸で3500玉と過去最少の出荷数となった。支柱を立てて実をつるす「立ちづくり」でネット(網目模様)を美しく入れるなど、栽培の難しさや管理の大変さが要因。とはいえ1988年の出荷開始から根強いファンは多く、販売元のキサキ糧穀(帯広市愛国町)の鬼崎友宏社長は「若い新規就農者を中心に生産者仲間を増やしたい」と呼び掛けている。
帯広メロンは、十勝管内の農家が果物と花、野菜の生産技術向上を目指して立ち上げた「FFVプロジェクト」によって生まれた。品種は横浜植木(横浜)の高級赤肉アールス系「妃春秋系」で、玉の表面にネットがきれいに入り、15度前後の糖度が全面に行き渡る特徴を持つ。
収穫から7~10日で追熟することも特徴。そのため2玉1セットの箱詰め時に食べ頃を知らせる手紙を添え、一番おいしいタイミングで食べてもらうよう工夫している。
今季はキサキ糧穀が1000玉、芽室町の米山真有美さん(49)が1500玉、中村修一さん(63)が3000玉ほどを栽培。自主規格に合わない品も出るため、供給数は3500玉ほどになった。価格は2玉1セットで4500円ほどで、全てがスーパーの贈答用で取引された。
玉の大きさ、ネットの入り、糖度の乗せ方を重視してブランド化している。特にネットの入りは、温度と湿度、水の管理が適切だと如実に美しく表れ、特にこだわっている要素。米山さんは「1日に何回もハウスを見に行かなければならず、赤ちゃんを育てているみたい。小麦やニンジンなど他の作物も重なっての仕事なので、結構きつい」と話す。
鬼崎社長は「教えてもらったからと言って、そのままできるものではなく、とにかく作るのが難しい。でもFFVは『帯広・十勝の生産者は何でも作れる』ことを証明するために始動したプロジェクト。僕らと一緒にチャレンジし、十勝エリアを盛り上げたいという仲間を増やしたい」と話している。(佐藤匡聡)