乳価引き上げ「現場に勇気」「納得していない」 出口対策継続に不満も
来年度の生乳価格(乳価)交渉で、加工向け原料の乳価が過去最大の1キロ当たり10円値上げが決まり、管内の酪農家からは一定の評価が聞かれた。ただ、生産現場のコスト上昇は続いていて、規模拡大してきた大規模酪農家からは不満が漏れた。
道内の酪農現場はこれまで増産を続けてきたが、今年度は需給環境の改善のために生産抑制を行い、来年度は減産目標が示されている。ホクレン生乳共販課は、「現場の生産抑制に対する強い意志と急激な生産コスト増が適切に乳価に反映されなければ、北海道酪農の経営計画が困難となると訴えた」とし、現在の取り組みが乳価引き上げにつながったとみている。
十勝酪農畜産対策協議会の坂井正喜会長(JA大樹町組合長)は「出口対策の出費はあるものの、酪農家の厳しさを理解して交渉してくれた結果で、現場は勇気づけられるのではないか」と話した。
管内の大規模農場でつくる十勝酪農法人会副会長でJリード(豊頃町)の井下英透社長は、現場が求めた期中の乳価改定がかなわず、脱脂粉乳の在庫削減へ酪農家も資金を拠出する出口対策の継続に不満を示した。「10円上がっても出口対策が続けば実質の手取りは減ってしまう。評価はできない」と語り、在庫解消のために国によるバターや脱脂粉乳の輸入を一時停止することを求めた。
本別町内で140頭を飼育する家族経営の男性(66)は「10円上がって良かったが、納得はしていないのが本音。この年末は貯金を崩す人や離農の話も聞く。生産基盤を守るため、搾れる環境をつくってほしい」と訴えた。(安田義教、安藤有紀)