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農に向き合う~農業経営部会会員紹介「幕別・小田壱」

「きな粉を十勝のソウルフードにしたい」と語る小田社長

1.戦争下の食糧難支えた老舗
 1938年、小田琢一社長(48)の曽祖父・故善六さんが精米業の小田商店として創業。小田社長は「当時は安い物が手に入らず、恵まれない地域の食糧需要に対応しようという思いがあった」と伝えられてきた。1940年から乾麺、1942年からきな粉の製造も手掛け、戦後、統制経済が撤廃されてから、食品加工を本格的に開始。1950年代後半には、2代目の祖父・故善一さんが全国にきな粉を持ち歩いて行商し、販路を拡大した。

 きな粉には、市販商品が6種類あり、得意先用には豆の品種や焙煎(ばいせん)の温度によって50種類以上を手掛け、年間の生産量はおよそ50~60トンに及ぶ。乾麺はうどん、ひやむぎ、そうめん、ラーメン、そばがあり、全体で約100種類を自社工場で製造している。

2.手間惜しまず、おいしく作る責務
 小田社長は3年前、「ゼロから『壱』を創造する」という経営理念を掲げた。食品加工を通じて、世界に発信できる十勝の魅力を創造することや、いかなる時代の変化にも、挑戦者の気持ちで未来を創造していくという意味を込めている。「十勝の農業があってこそ成り立つ仕事。思いやりと感謝の精神を忘れず、共存共栄を大切にしたから残ってこられた」と語り、日本の穀倉地帯である十勝で食品加工をする強みを最大限に生かすため、農家やその関係者との情報交換を日々大切にしている。

 商品のこだわりは、安く作ることより、値段が高くなったとしても、おいしく作ること。効率重視できな粉を製造しようとすると、焙煎時間が短く、ひき方が粗くなってしまう。今は小田社長自らが製造に当たり、豆の芯までしっかりと火を通すことで甘みや香ばしさを出す。「加工によっておいしくもなるし、まずくもなる。我々にはおいしくする責務がある」と力を込める。

3.人を動かす経験も糧に
 同友会には2014年に加入。同友会には六次化・農商工連携などの食品加工に力を入れている人や、前向きでスケールの大きい活動をしている人が多くいる。特に農業者は、ただ親から引き継いで営農しているのではなく、前向きに勉強し、変革していこうとする人がそろっており、「とても刺激になるし、成長させてくれる場」という。

 十勝農商工連携部会では部会長を務め、同友会の幹事会の一員でもある。「勉強するだけではなく、学んだことを生かし、若い人たちをリードする立場にならなくてはいけない。苦労も伴うが、人を動かす経験が実になっている」とやりがいを語る。

4.きな粉をソウルフードに
 きな粉は冬の季節商品とされてきたが、高たんぱくで健康にもつながることから、最近は牛乳などに混ぜて毎日飲む人も増えている。一方の小麦は、生産量が多いものの、十勝でうどんを食べるという文化は発達していないのが現状。小田社長は、「きな粉やうどんを十勝のソウルフードとして定着するよう、消費拡大を狙いたい」と意気込む。

 創業から80年余り。地元農家が高い品質の原料を作ってくれていることへの感謝を第一に、これからも十勝だからこそできる味を追求し、国内のみならず世界へ、農産加工品を発信していくことを目指している。


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