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赤潮、高レベルの警戒必要 北大名誉教授今井一郎氏

十勝沿岸の赤潮被害について語る今井名誉教授

道東沿岸「越冬」注視 世界で被害例プランクトン「セリフォルミス」
 十勝沿岸の漁業被害の原因とみられる赤潮について、プランクトンを長年研究する今井一郎北大名誉教授(元日本プランクトン学会会長)は「十勝沿岸でこれまで確認された赤潮は『降雨性』でプランクトンの有毒性は弱かった。今回は、状況やプランクトンの種類が異なる」と従来との違いを強調。「今後も高いレベルでの警戒が必要」と警鐘を鳴らしている。

 今井名誉教授や釧路水産試験場の資料によれば、道内初の赤潮は1972年、十勝川河口沖で発生した。その後、十勝沿岸では83年、85年、86年に赤潮を確認。時期はいずれも9月で、90年代以降は小規模な発生にとどまっていた。

 十勝で過去に発生した赤潮は「降雨性赤潮」とし、今井名誉教授は「降雨による河川の増水で、海が低塩分と高栄養の状態となり、日照による気温上昇や凪(なぎ)などの気象条件が加わると、赤潮の発生率が高くなる。十勝沿岸は停滞水域のため、赤潮が比較的発生しやすい環境といえる」と分析する。

 当時の原因プランクトンはギムノディニウムやプロロケントルムなどで「魚類が赤潮を回避することで定置網漁への影響はあっても、魚介類のへい死はなかった」という。

 今回確認されたプランクトンのカレニア・セリフォルミスについては「ニュージーランドや中国などで確認されたほか、昨年はロシア・カムチャツカ半島沿岸でタコやウニの被害が出た要因とみられており、チュニジアやチリではサーモンに影響が出ている」と世界各地で被害を及ぼしている現状を語る。

 特性としては「三つほどのタイプに分かれるとの見方がある」とし、「比較的低い海水温でも発生しているが、チリで発見されたものは、水温が9度まで下がると増殖の速さが5~6分の1まで落ち込む、との調査結果がある」と話す。

 同属で暖水系のカレニア・ミキモトイはこれまで、西日本で被害が確認されていた。2015年には函館湾でミキモトイによる赤潮が発生。海水温の上昇などで道内沿岸まで北上したとみられ、魚介類をへい死させた有害赤潮としては道内初の事例となった。

 セリフォルミスによる赤潮は今回が国内初確認。「今年は水温などをみると、日本海側の対馬暖流の流れが道北の宗谷海峡を回り、プランクトンが道東までたどり着いた可能性は高い」とするが、「道内の水域や西日本を含めた分布の確認調査が必要になる。もし、セリフォルミスが西日本で確認されれば、道内の沿岸で越冬できなくても、ミキモトイとともに再び道東沿岸まで運ばれる可能性はある。津軽海峡を突破するケースも否定できない」としている。

 今井名誉教授は「対応策として、バイオ株などをつくり、毒性や魚介類を殺すメカニズムを探る必要がある。また、どのような環境を好むのかという最適条件と耐性範囲を、室内実験などで早急に把握しなければならない」と“敵を知る”ことの重要性を説いている。(松村智裕)

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