帯畜大大学院の開澤さん、イシムカデの一種を日本本土で初確認 日本蜘蛛学会誌に掲載
帯広畜産大学大学院環境生態学コース1年の開澤菜月さん(22)が、イシムカデの一種を日本本土で初確認したと、日本蜘蛛学会の学会誌(6月28日出版)に発表した。同会によると、学生による論文が学会誌に掲載されるのは珍しい。
初確認したムカデは体長約3センチと、一般的なイシムカデより大きい。世界に広く分布するが、東アジアでは択捉島とモンゴルでしか確認されていなかった。和名がなかったため、論文で「オオチャイロイシムカデ」という名前を提案した。
富山県出身の開澤さんは、「実家でよく見ていた身近な生物だから」と、ムカデなどの多足類を研究している。昨年春、同コースの山内健生准教授が、帯広市内の自宅に侵入したムカデを見つけ、当時畜産学部4年の開澤さんと名前を調べ始めた。
「これまで見たことのないムカデで、調べがいがありそうと思った」と開澤さん。解剖して目やあご、生殖肢などを海外論文の標本と照らし合わせ、精査した結果、日本で未確認の種であると突き止めた。昨年10月末に英語論文を同会に投稿し、専門家の査読を経て学会誌掲載が認められた。
山内准教授は「日高山脈や大雪山を除き、道東の平野部は昆虫研究者から注目されておらず、研究が遅れている」と指摘。「イシムカデは高校の理科の教科書にも載っている。今回の発見によって、日本のイシムカデ研究が一歩前進した」と成果をたたえる。
開澤さんはイシムカデを専門に研究を続けており、「まだ名前が分からないムカデが複数いる。初心を忘れず、研究を続けていきたい」と意気込んでいる。(高田晃太郎)