料理一筋45年 「味処進藤」の進藤淳さん引退
帯広市内の和食店「味処進藤」(東2南11)が31日で閉店することになり、店主の進藤淳さん(59)も45年の料理人人生にピリオドを打つ。冷凍品は使わないなど食材にこだわり、丁寧な接客で地域住民の支持を集めてきた。店は連日、閉店を惜しむ常連客らで混み合い、進藤さんは「本当に感謝の気持ちでいっぱい」と話している。
進藤さんは1956年陸別町生まれ。小さい頃から料理が大好きで、中学卒業後、足寄町の日本料理店に入店。20歳で上京し各店を渡り歩いた後、帯広のすし店などで修行を重ねた。修業先はどこも職人気質で荒々しい職場だったが、「腕利きの料理人になって見返す」との思いで厳しい日々を乗り越えたという。
43歳のとき、現店舗で念願の独立。手作り総菜の和弁当や四季折々の食材を使った懐石料理など、長年積み重ねた技術や経験をもとに客層を築いていった。北海道日本料理研究会帯広支部・帯広調理師信友会(勝木剛会長、木幡好斗支部長)にも所属し、2014年には永年会員30年の表彰も受けた。
妻の初代さん(54)は進藤さんを「根っからの料理人」と評し、「お客さんが何を食べたのかを細かく記憶し、厨房(ちゅうぼう)にいても来店をすぐに察知する。料理だけでなく多方面で気遣いができる人」と話す。
創業から16年。食材高騰や増税に悩まされた時期もあったが、「『ここの味が好きだから』と背中を押してくれるお客さんの声が励みだった」と進藤さんは振り返る。4月で60歳。自身の年齢や店舗の老朽化といった問題もあり、現役を退き、いったん体を休めることにした。進藤さんは「『おいしかった』の言葉は今も忘れない。最後まで力の限り頑張りたい」としている。(安倍諒)
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