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【WSJ】チャットGPTに写真をアップロードしても安全か

AIユーザーはある程度のプライバシーが守られていると考えているが、それは危険な思い込みかもしれない
 人々は文字だけでなく映像でも人工知能(AI)チャットボットに質問をするようになっている。発疹の特定、庭の植物の識別、リンクトイン用のプロフィール写真編集などのために写真をアップロードしている。

 だが、AIとの画像でのやり取りが当たり前になるにつれ、ユーザーが自覚している以上の情報を共有している可能性がある。個人情報の専門家はそう指摘する。

 AI関連企業は画像のアップロードを一時的なものとみなすことが多い。だがAIとのやり取りが終わった後で画像がどう扱われるかは不透明だ。AIに画像をアップロードすることにはリスクが伴う。技術的なぜい弱性があるほか、AI企業の方針はばらばらで不明瞭、さらに将来どう使われるかが分からないためだ。

 米デジタル権利擁護団体、電子フロンティア財団の技術者ジェイコブ・ホフマンアンドリューズ氏は、「他の人に見られたくない写真はアップロードしないことだ」と述べた。実際は多くのAIユーザーが、インターネットの場合と同様、ある程度はプライバシーが守られているものと考える。だがそうではないかもしれない。

見えないものも
 ホフマンアンドリューズ氏によると、AIチャットボットは画像の保存場所だと考えるべきで、iCloudやグーグル・フォトのようなものだが、リスクはより高い。最もありがちなリスクはセキュリティーだ。AIチャットボットも、ハッキングされてユーザーの情報が抜き取られる可能性がある。

 それだけではない。そもそもAI企業がユーザーのデータや画像にアクセスできるのだ。企業はAIモデルの性能を検証するため、ユーザーとのやり取りの一部を定期的に確認しており、その中にはアップロードされた写真も含まれる。いわゆる人間参加型(HITL)の監視だ。つまり、ユーザーがチャットボットとの会話を削除しても、その会話は映像なども含めて監視に回されているかもしれない。

 庭の植物や腕の発疹の拡大写真はアップロードしても無害と思うかもしれない。問題は、ユーザーが思っているよりはるかに多くのことが画像から分かることだ。画像には、写真が撮影された場所や時間などのメタデータが埋め込まれている。

 一方、高解像度の写真は、たまたま机やカウンターに置かれていた書類やクレジットカードが判読可能かもしれない。ほかにも自宅や職場を特定できる情報や、他の人の生体データが映り込んでいるかもしれない。

 アップロードされた画像は、AI企業がメタデータを削除しなければ、行動パターンや居場所といった個人情報の宝庫となり、企業がAIモデルの改良に利用する可能性がある。スタンフォード大学人間中心AI研究所(HAI)のプライバシー・データポリシー研究員ジェニファー・キング氏はそう指摘する。

 つまりチャットボットのユーザーは、気づかないうちに無償でAI企業に学習データを提供している可能性がある。もし選択肢が与えられていれば同意しなかったかもしれないにもかかわらずだ。

企業の方針
 メタデータなど個人の特定が可能な情報が付帯しているにもかかわらず、画像の扱い方は各社ばらばらだ。

 キング氏が実施した調査によると、マイクロソフトはAIアシスタント「コパイロット」に入力された画像を学習に使用していない。AIモデル「クロード」を開発したアンソロピックも同様だ。チャットGPTの開発元であるオープンAIは、ユーザーが拒否しない限り、全てのデータを学習に使用する。マイクロソフトとオープンAIの広報担当者はこれを認めた。アンソロピックは方針を更新したとし、システムの学習・改良用としてデータ利用を許可するかどうかをユーザーが選択できると述べた。

 調査ではこのほか、メタAIの米国のユーザーには拒否する選択肢が表示されないことが分かった。メタ・プラットフォームズの広報担当者は、キング氏の調査内容について肯定も否定もせず、情報が生成AIモデルと機能でどのように使われているかは、フェイスブックのプライバシーセンターを参照するよう述べた。

 休暇やレシピの写真はAIシステムが処理する膨大なデータの中に紛れるかもしれないが、一部の画像はシステムに記憶され、認識可能な形でチャットボットの回答に表示されるリスクが高い。電子フロンティア財団のホフマンアンドリューズ氏によると、これには二つのタイプがある。一つは有名な「アフガニスタンの少女」の写真のように、ネット上で何千回も表示され、多くの初期のAIシステムが完全に再現できる画像だ。もう一つは、極めて特徴的で、統計的には外れ値となるような画像だ。

 ごく普通のAIユーザーの私的な写真がAIシステムによって完全に再現される可能性は低いとホフマンアンドリューズ氏は話す。ただ、AIが完璧に再現していなくても、プライバシーの問題が起きないとは言い切れない。特徴的なあざ、目に見える病状、いくつかの要素の組み合わせなど、個人をほぼ特定できる画像が生成されるかもしれない。

 そのほか、アニメのキャラクター作成や老け顔のシミュレーション、プロフィール写真などに使う画像も、AIシステムに記憶される可能性がある。こうしたアプリの多くが人の顔の鮮明で高画質な画像を必要とするためで、個人の画像には生体データも含まれる。

 個人情報保護を強く意識するユーザーでも、初期設定やインターフェースが分かりにくいと、意図せずに画像を公開することになりかねない。メタが今年リリースしたAIチャットボットのアプリでは、アップロードした写真や実名入りの会話が、アプリ内で誰でも見られる公開フィードに投稿されているのをユーザーが見つけた。メタの広報担当者は、チャットの共有は解除できると述べた。

意図しない使用
 AIが社会に及ぼす影響を研究するAIナウ研究所の共同ディレクター、サラ・マイヤーズ・ウエスト氏は、アップロードされた画像が将来、本来の目的とは違う方法で再利用される可能性があると指摘する。

 マイクロソフト、アンソロピック、メタ、オープンAIは、データを第三者に渡すことは許可していないとしている。

 ウエスト氏によると、企業はデータを第三者に販売していない場合でも、アップロードされた画像を保持することが多い。AIの機能やビジネス戦略が変化する中、そうした画像がどう使われるかをユーザーは予測できない。

 同氏は「アップロードしたものは、ユーザーがそのシステムを使っている時間よりはるかに長く生き続ける」と述べた。(2025年9月11日付、BY JACKIE SNOW)


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