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褐斑病抵抗性が極めて強いてんさい新品種「KWS 8K839」

道総研 北見農業試験場 研究部 麦類畑作グループ
道総研 十勝農業試験場 研究部 豆類畑作グループ
道総研 中央農業試験場 作物開発部 作物グループ
道総研 上川農業試験場 研究部 生産技術グループ
(一社)北海道農産協会

1.背景
 「カーベ 2K314」(平成28年北海道優良品種認定)は、褐斑病抵抗性が“強”の多収品種で、抵抗性が“弱”の「かちまる」(平成19年北海道優良品種認定)に置き換わって普及していくことで、褐斑病対策で大きな役割を果たしてきた。しかし、近年の気候変動に起因する気象条件によっては“強”の抵抗性でも不十分な場合があり、特に令和4年は、夏期の高温多雨気象により例年になく褐斑病が蔓延し、「カーベ 2K314」においても、各地で被害が多発した。今後も、褐斑病が蔓延しやすい気象条件が頻発する可能性があり、安定的に効果のある防除薬剤が少ないこともあいまって、抵抗性が“強”の品種では、褐斑病を抑えていくことが難しくなることが予想される。そのため、より強い褐斑病抵抗性を持つ品種が必要とされている。

2.育成経過
 ドイツのKWS種子株式会社が育成し、令和元年に日本甜菜製糖株式会社(以下 日甜)が輸入した。令和2年から道総研(北見農試、十勝農試、中央農試、上川農試)、北海道農産協会(ホクレン、北海道糖業、日甜)で各種試験を実施し、令和5年に北海道の優良品種に認定された。

3.特性の概要
 置換対象品種は、日甜の主力品種である「カーベ2K314」である。以下では、「カーベ2K314」と比較して特性を説明する。
1)病害抵抗性等 「カーベ2K314」に対する病害抵抗性等の比較を、表1に示す。褐斑病抵抗性は、「カーベ2K314」の“強”に対して“かなり強”である。褐斑病抵抗性検定試験(表2)では、発病程度が“かなり強”基準品種の「リボルタ」より著しく低かったので、“かなり強”品種の中でも抵抗性が極めて強い。そう根病抵抗性と根腐病抵抗性は、「カーベ2K314」と同様の“強”および“中”である。黒根病抵抗性は、「カーベ2K314」より1ランク低い“中”である。抽苔耐性は、カーベ2K314」と同様の“強”である。
2)収量性 研究機関で行われた全道平均を、表3に示す。「カーベ2K314」と比較して、「KWS 8K839」の根重は多く、根中糖分は並で、糖量は多い。
3)形態 「カーベ2K314」と比較して、草姿は“直立”に対し“やや開平”、葉長は同様の“長”。葉色は、同様の“やや濃緑”、葉面縮(葉の表面の皺)は、“中”に対して“やや少”、葉身の大きさは、“小”に対して“中”。葉柄長は、“長”に対して“中”。根形は 、同様の“やや短円錐” 。根周は、同様の“やや大”である。

4.普及態度
 「KWS 8K839」は、極めて強い褐斑病抵抗性を持つ。さらに収量性が「カーベ 2K314」より優れるため、褐斑病が蔓延しやすい条件下においても、安定した収量を確保することが可能となる。
以上から、「KWS 8K839」を「カーベ 2K314」栽培地域の一部の褐斑病が蔓延しやすい地域で、褐斑病対策として置き換えることで、てんさい生産と農家所得の安定に貢献できる。適地は北海道で、普及見込面積は2,000haである。
 栽培上の注意は、黒根病抵抗性が“中”であるため、黒根病が発生しやすい圃場では、抵抗性がより優れる品種を栽培する。


詳しい内容については、次にお問い合わせください。
道総研十勝農業試験場 豆類畑作グループ
電話(0155)62-2431 E-mail:tokachi-agri@hro.or.jp

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