テンサイ褐斑病防除は“強”品種とマンゼブで省力化!
道総研 十勝農業試験場 研究部 生産技術グループ
1.背景と目的
平成27年以降、主要防除薬剤であるQoI 剤、DMI 剤、カスガマイシン剤において薬剤耐性菌が相次いで確認され、これらの剤を用いないマンゼブ水和剤を主とした防除体系が必要となった。また、平成29年指導参考「てんさいの褐斑病の多発傾向に対応した薬剤防除対策」では、褐斑病抵抗性にかかわらず散布間隔は14日以下(高温多湿時は10日間隔)とされたが、てんさい作付面積の約2/3を占める抵抗性“強”以上の品種に対する効率的な防除法が求められた。
2.試験方法
1)マンゼブ水和剤の散布タイミング
ポット試験によるマンゼブ水和剤の病原菌接種前・接種後散布による防除効果の比較
2)各薬剤の散布間隔と防除効果
予防的に等間隔散布し、AUDPC により効果判定(供試品種:カーベ2K314)
3)防除体系の検討
9月中旬以降の防除の要否を検討、現地慣行の防除暦と防除効果を比較
3.成果の概要
1)マンゼブ水和剤は、接種後散布では防除効果が劣るが、接種前に散布すると高い防除効果が得られた(表1)。本剤に浸透移行性がなく、感染後の防除効果は得られないため、予防効果の持続期間内に次の散布を行う必要がある。
2)マンゼブ水和剤の400~500倍の14日間隔散布と10日間隔散布の防除効果を、AUDPC で評価したところ、ほぼ同等であることが示された。このことから本剤の予防効果は14日程度持続すると考えられた。
硫黄・銅水和剤および銅水和剤を用いてマンゼブ水和剤の500倍14日間隔散布とほぼ同等の防除効果を得るためには7日間隔で散布する必要があった(表2)。
【用語解説:AUDPC = Area Under the Disease Progress Curve】
罹病経過曲線下部面積。発病度の折れ線グラフの下部面積で、根重減収と相関があるとされる。最終的に同じ発病度になっても初期から発病が伸びた場合は被害が大きい。
3)マンゼブ水和剤の最終散布を9月中旬に行った区と8月末で切り上げた区でAUDPC の値はほぼ同等だった(図1)。9月2半旬まで予防効果が持続するように防除を行えば9月中旬に散布する防除効果は小さいと考えられる。
“強”品種に対する現地慣行体系(5回・8成分回数)と比較して、マンゼブ水和剤400倍14日間隔散布(5回・5成分回数)は防除効果が高かった(図2)。
抵抗性“強”の品種では、次の防除法により省力的かつ高い防除効果が得られる。初発後までにマンゼブ水和剤400~500倍の散布を開始し、その後は14日間隔で8月6半旬~9月1半旬まで散布を継続し、9月2半旬まで予防効果を維持する。なお、多発条件下では400倍の防除効果が高い。
4.留意点
1)本成績は、褐斑病抵抗性“強”以上の品種に活用する。
2)マンゼブ水和剤の使用回数の上限に達する場合は、硫黄・銅水和剤、銅剤等を活用する。
3)本成績はマンゼブ水和剤以上の効果を有する別系統薬剤が登録されるまでの当面の対策とする。
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