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初産牛の乳量を高めよう

道総研酪農試験場 酪農研究部 乳牛グループ

1.試験のねらい
 初産牛は北海道のホルスタイン種牛群の30%以上を占めるが、乳量は経産牛より低く、初産次に淘汰される牛の割合は15%に及ぶ。初産次の乳量向上および2産次に移行する割合を高める技術が必要である。そこで本試験では、初産牛の乳量を向上させ、栄養状態に起因する疾病や事故を低減するための、初産分娩後の適正な体重と、初産分娩後体重に応じた初産泌乳期の養分濃度を提示する。

2.試験の方法
(1)初産分娩後の目標体重の設定
 2011~2015年の全道牛群検定成績(初産分娩月齢24ヶ月以下、分娩後30日以内に体重記録のある初産牛約8万頭)および酪農試の初産牛172頭を用いて、初産分娩後体重と初産次の分娩状況や乳生産性の関係を検討し、初産分娩後の適正な体重を設定する。

(2)初産泌乳期の栄養水準
 酪農試験場の初産牛111頭を供試した。初産分娩後体重および初産泌乳期の給与飼料の養分濃度(対照区(65頭、分娩~分娩後149日:TDN74%、CP16%、分娩後150日~乾乳:TDN69%、CP14%)、高栄養区(56頭、分娩~乾乳:TDN74%、CP16%))の組合せにより、初産分娩後の体重に応じた初産泌乳期の飼料養分濃度を明らかにする。

(3)一乳期高栄養飼養の現地事例
 初産分娩後体重と初産泌乳期の養分濃度の関係を十勝管内1戸および根室管内2戸の酪農場において調査し、一乳期高栄養飼養の効果を検証する。

3.成果の概要
(1)初産分娩月齢が24ヶ月以下のとき、初産分娩後体重が大きいほど初産次の305日乳量は高まるが、体重650kg 以上では乳量の増加程度は小さくなった(図1)。また、分娩後体重が大きくなると乳蛋白質率/ 乳脂肪率比の異常発生率が高まるが、体重550kg 以上ではほぼ一定の値となった。分娩後体重650kg 以上では、難産および死産率が高く、初産分娩前の過肥(ボディコンディションスコア3.75以上)、初産分娩前後の乾物摂取量の低下がみられた(表1)。初産分娩後体重の増加は乳量向上に有効であるが、分娩後の体重の上限は650kg を目安とする。
(2)初産分娩後体重650kg 未満の場合、初産分娩から乾乳までTDN74%、CP16%の飼料を給与すると、4%乳脂補正乳量は平均して680kg 向上し、泌乳後期のTDN 充足率および乾乳前のボディコンディションスコアは適正範囲となった(表2)。初産牛では、初産泌乳期を通じて飼料の養分濃度を変えない一乳期高栄養飼養により乳量の向上が図られる。また、初産分娩後体重が549kg 以下では、高栄養区で泌乳後期の体重増加量が最も大きかった(図2)。体重549kg 以下では初産泌乳期に成長に要する養分量が多いと考えられ、
初産分娩後体重は550kg 以上にすることが望ましいが、体重が小さい場合は一乳期高栄養飼養により増体の向上も期待できる。
(3)現地酪農場において、初産分娩後体重650kg 未満では、分娩後体重が大きいほど乳量は高いこと、一乳期高栄養飼養により、分娩後のエネルギーバランスの悪化や初産乾乳前の過肥を招くことなく、初産乳量を高められることが確認された(データ略)。

4.留意点
(1)初産分娩前のボディコンディションスコアを適正に管理する。


詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研酪農試験場 酪農研究部 乳牛グループ 谷川 珠子
電話(0153)72-2004 FAX(0153)73-5329
E-mail tanigawa-tamako@hro.or.jp

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