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農に向き合う~農業経営部会会員紹介「鹿追・内海ファーム」

乳肉複合農業に独自販売開拓を加えた「持続化可能な地域と生きる経営」に取り組む内海さん

1.「ホルブラ」肉の生産
 鹿追町で、よつ葉乳業に出荷する生乳の生産、肉用子牛の販売、牧草やデントコーンの飼料作物生産、自家産の飼料で育てた牛肉の加工品販売などを行う。営業形態は有限会社で、耕作面65ヘクタール。

 1922年に宮城県黒川郡から入植し、曽祖父の内海吉蔵さん(故人)が、小さな田畑でスタートし、その後は、少しずつ酪農を取り入れた。現在は、3代目の父・亮一さん(66)と、4代目の代表取締役・洋平さん(35)が協力し、酪農をメインに経営。150頭を飼育し、来年で丸100年の節目を迎える。

 内海さんは「土・草・牛と向き合う仕事を通じて、他者を尊重する心を尊重する心を養い、心技体を成熟させ、牧場が秘める豊かさを発揮させる」を経営理念に掲げる。

 多角化を見据え、ホルスタインとブラウンスイスを掛け合わせた「ホルブラ」の生産も始めた。赤み度合いが強いホルブラを、地場産小麦使用のバンズで挟む「鹿追バーガー」を開発。2019年には、JAL国内線ファーストクラスの食事(トマト煮込み)として提供された。

 ホルブラの出荷は、早くても4歳以降。しっかりと運動をする事でハリのある筋肉が作られ、シチューで用いても「肉のうまみが、しっかりと肉の中に残る」(内海さん)形だ。

2.アニマルウェルフェアに基づく経営
 同ファームは、「土から育てた自家産のデントコーンを多く与えた生乳生産」を一つの柱としている。牛の健康維持にもつながる事で、結果的に経済的にもプラスになる。家畜にとって快適な環境で飼育する「アニマルウェルフェア(動物福祉)」の考えに基づき、一頭一頭に愛情も注ぐ。

 その上で、ホルブラ肉の生産について、内海さんは「ファームの新しい軸として確立したい。メインの酪農とともに、もう一つの柱として、農場全体の持続可能性を高めたい」と話す。

 このため、搾乳の役割を終えたホルブラの雌を、7~8歳をめどに出荷する事も検討する。「搾乳を終えた段階で、もう一花咲かせ、価値も高めてあげたい」との思いからだ。

3.「学び会える環境がある」
 内海さんと、北海道中小企業家同友会とかち支部の関係が深まったののは、ホルブラの肉牛化を進める時期から。「普通なら会えない人と会える」。同支部内でのつながりが、さらに新たな縁を呼び、JAL国内線ファーストクラスへの提供につながった。

 内海さんは現在、農業経営部会で幹事を務めて4年目。小さな地域から地球規模まで見据えたビジネスを検討する人、小規模ながらも顧客が求めるモノを追求する人…など、「しっかりとした考えを持った人たちが集まっており、学び合える環境がある」と話す。

 妻の絵里さん(40)も、同支部の経営指針研究会に参加する。「妻は一番の相談役。妻の視点でもう一度、内海ファームを見てもらいたい」(内海さん)。絵里さんも、育児に少し余裕が出てきた今春から、ファームの経営にも携わるようになり、二人三脚で歩む。

4.持続化可能な地域と生きる経営
 「牛飼いの『うっちぃファーム』の肉を食べたい、楽しみにしている、という人たちに、応えていきたい」と話す内海さん。年5頭のホルブラが販売できれば「生乳生産とともに、ファームの柱の一つになる」とも。

 そのためには、予約販売やネット販売体制の確立など、経営面の強化だけでなく、牛の快適性や生産性を向上させる必要もある。

 「3代目は乳牛の安定供給の基盤を作った。自分は個性を出しながら、多角化が進められれば」。粗飼料生産を基盤とした乳肉複合農業に、独自販売開拓を加えた「持続化可能な地域と生きる経営」を目指す。


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