農に向き合う~農業経営部会会員紹介「更別・松橋農場」
1.歴史かさねて90年
更別村で農業を営み90年。松橋農場は繁殖と肥育を手がける農家として肉牛約60頭を飼養。約45ヘクタールの畑で種イモ、小麦、豆、ビート、スイートコーン、飼料用の牧草も生産する畜産・畑作農家だ。
農場の歴史が始まったのは1930年。松橋泰尋社長(38)の曾祖父にあたる故広治氏が秋田県から開拓民として移住して開墾。祖父で二代目の故房雄氏の代で規模を拡大した。四代目の泰尋氏は札幌出身。三代目文男氏(71)の三女・涼子さん(40)と結婚し、婿として2011年に新規就農。14年に経営を継ぎ、同年に法人化した。
2.畑作・畜産で循環
松橋農場では「農畜の循環」を実現している。堆肥を畑に入れて、良質な土づくりにつなげる。その畑で収穫される作物のうち規格外品など活用し、エサとして牛に与えている。牧草も含め自前で調達できるエサを中心に使うことで飼料代が軽減され、商品にならない部分の有効活用にもつながる。
また牛が過ごす牛舎内のスペースは通常よりも広く取り、飼養環境に配慮。エサには穀物のコーンを与えないなど生産面でさまざまな取り組みを続ける。「松橋牛」のブランドで道内外の飲食店やホテルなどに流通する同農場の和牛肉などは「脂が甘くて軟らかい。赤身がメーンなので、牛肉が苦手でも食べられる」と顧客からの評価も高い。
3.部会員が飲食店経営を後押し
生産現場と消費者をつなぐ活動にも乗り出している。松橋社長の代になった14年、市内中心部にレストラン「農家バル FOOD BABY」をオープン。松橋牛はもちろん、これまで管内120の生産者の農畜産物を取り扱い、十勝の食材を発信している。
オープン時から力になってくれたのが、12年に入会した道中小企業家同友会とかち支部・農業経営部会の仲間たち。生産者が飲食店を経営する取り組みに「同友会にいるトップファーマーたちは応援してくれた」(松橋社長)。開店当初、店舗で取り扱った品目も同友会会員が生産したものが主だった。
現在は同部会の販売戦略グループリーダーとして、十勝の農畜産品の価値を「食」「教育」「観光」の観点で伝える方法を模索する。「農業経営部会のメンバーは自社のことよりも地元農業のことを考えている。地域農業を変革することが日本の農業を変えると思っていて、自分も心からそう思う」と懸命に取り組む毎日だ。
4.2046年まで4代目として走る
「人がやっていない面白いことをやるのが好き。まだまだアドベンチャー(農業者として)は10年目」と笑顔を見せる松橋社長。小規模の生産者でもバイオマスを活用し、エネルギー化できる仕組みづくりの準備を進めるなどチャレンジは尽きない。
「2046年までに日本を世界一の農業大国に」―。松橋農場のホームページに掲げている言葉だ。2046年は長男が35歳になる年で、経営を引き継ぐ年とすでに決めている。
松橋社長は「1930年から続く農場の商品や取り組みに価値をつけて、ブランディングすることが4代目のミッション」と話す。残された日数を常に頭に置き、自らの理念を実現させるために走り続けている。
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