牛乳消費の輪広がる 給食再開願いつつ 新型コロナ
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休校措置で、学校給食用の牛乳が行き場を失う中、全国で牛乳の消費拡大の動きが広がっている。酪農が盛んな十勝では農業団体や自治体が先頭に立って消費をPR、農業と関係の薄い企業も独自の取り組みを展開している。学校給食向けの生乳は加工用に転用し目立った混乱は発生していないが、飲用消費の動向を左右するだけに、農業関係者は早期の学校再開を期待している。
JA道中央会は先週から、道内の本支所で来客用のお茶を牛乳に変更した。帯広支所の冷蔵庫にも牛乳パックが並び、職員が紙コップに入れて提供している。同支所は「少しでも消費拡大につながれば」とする。
鹿追町では役場職員でつくる互助会が、まとめて牛乳を購入する日を設けるなど、率先して消費の先頭に立っている。
北電道東支社と同送配電カンパニー帯広支店は16日から、社員食堂の利用者向けにパック牛乳(200ミリリットル)の無料配布を始めた。27日までの平日午前11時半~午後1時半の限定。初日は約100個を用意した。
送配電カンパニー帯広支店業務部の田中哲也さん(24)は同僚の早川宙貴さん(23)と一緒に牛乳を受け取った。「普段はブラックコーヒーがほとんどだがコーヒー牛乳にしてみた。久しぶりに飲むとおいしい」と話していた。
コンビニエンスストアのローソンは20日までの期間、帯広・十勝を含む全店で、国内生乳100%のホットミルクを半額の65円で提供(持ち帰り限定)している。チェーン名とミルク缶のマークは1930年代のアメリカオハイオ州の「ローソンのミルク屋さん」が発端。同社は「来店客の栄養補給と牛乳の消費支援が目的」とする。
全国の学校給食向け牛乳の出荷量は1日約1900トンで、うち道内小中学校向けは約80トン。ホクレンによると、原料になる生乳を一般の飲用向けと加工向けに振り分けることで、給食分の生乳を余さずに流通している。
ただ新学期に入って通常通りに学校が再開されなければ、牛乳消費への影響が増すとみられている。JA大樹町の坂井正喜組合長(十勝酪農畜産対策協議会会長)は「工場で加工向けに処理できており、生乳の廃棄を迫られる状況にはないが、学校に限らず新型コロナの影響が長引くと、乳製品全般の消費に影響するので心配。消費喚起の動きは大歓迎で、とてもありがたい」と話している。
(安田義教、本田龍之介、大谷健人)