猛暑で野菜に病害、廃棄も 乳牛にも影響
十勝で続く猛暑で、農業に大きな影響が出ている。今年は7月下旬に管内初の熱中症警戒アラートが発表され、例年なら秋の涼しさを感じる今月下旬も35度以上の最高気温を連日記録。畑作では葉菜類を中心に生育不良の野菜が多く、酪農業でも牛の体調不良や乳量低下を危惧する声が出ている。今週後半以降も最高気温30度以上の日が続く予報で、影響の長期化が懸念される。
「これだけの被害は今までになかった。異常気象の頻度が高過ぎる」
音更町内の農業者男性(38)は25日、7ヘクタールのブロッコリー畑のうち、8割ほどで「黒すす病」や腐敗が発生した約40アールの区域をトラクターでつぶすことを決めた。「夜間の温度が下がらず、湿度も高いので病気が発生しやすい。コスト高の中で懸命に作業し、収穫できないのは残念」と肩を落とした。
ブロッコリーはJA木野(音更町)の特産品。道内有数の生産量を誇り、6月上旬から10月上旬にかけて、各農家が収穫期をずらしながら出荷している。同JAの佐藤誠司青果課長は「お盆すぎから最近にかけてだと、計画値の3~5割しか出荷できないレベル。早く例年並みに涼しくなり、湿度も下がってくれれば」と願っていた。
JA幕別町によると、同JA管内で作付けしているハクサイ20ヘクタールのうち、2ヘクタールは廃耕に。7月下旬の暑さが要因だった。収穫は7月上旬から10月中旬まで行われるだけに、久田吾朗青果販売一課長は「8月下旬の猛暑が追い打ちを掛けている。さらに廃耕するケースも考えられ、過去にない打撃」と話す。レタスやキャベツなどの葉菜類、ダイコン、ニンジンなども暑さで腐ったり、内部障害が起こるなど歩留まりが悪いという。
乳牛は暑さで病気になり、死んだケースもある。十勝家畜保健衛生所(帯広)によると、管内の獣医師や生産者からの情報では、6月1日~8月15日に管内で日射病・熱射病となった乳牛は、前年ほぼ同時期に比べて15頭多い19頭。そのうち10頭は回復が見込めず、死亡・廃用となった。繁在家輝子所長は「今月下旬の暑さで病気になる牛はさらに増える可能性がある」とみる。温度と湿度が高く、菌が繁殖しやすい状態のため、乳房炎やサルモネラ症への警戒も呼び掛けている。
ホクレンによると、十勝の生乳受託乳量は7月下旬が前年同期比6・3%減、8月上旬が同7・4%減、同中旬が同5・1%減だった。暑さが続いた7月下旬から8月上旬にかけて、乳量の落ち込みが特に大きく、酪農関係者は「8月下旬も落ち込みが懸念される」としている。(松村智裕)