小麦豊作の手応え 収量は平年超、質も安定
今年産の秋まき小麦の収穫作業がほぼ終わり、農家やJAなど農業関係者の多くが豊作の手応えをつかんでいる。実際の結果は乾燥・調製作業が終わった後だが、収量は平年を上回り、品質面も期待できそうで、大豊作だった一昨年に次ぐ水準との見方もある。前年は天候不順で記録的な不作に見舞われただけに、農家も豊作基調を喜んでいる。
十勝総合振興局によると、秋まき小麦は7月27日に収穫期に入り、1日時点で8割余りが作業を終えた。天候に恵まれて収穫作業は順調に進んだ。
日本一の生産地の音更町では、JAおとふけ農産課が「一昨年ほどではないが、原料段階では(10アール当たりの収量が)12俵を超えそう。見た目では品質も良さそうだ」と感触を語る。同JA管内では、春まきを含めた小麦の作付面積が全体の3分の1近くを占めており、「生産者も一安心ではないか」と話す。
他にもJA本別町は「収量は平年より多い。品質は遅く種をまいた畑でやや細麦傾向はあるが、全体では平年並み」とみており、JA十勝清水町も「平年より良くて、まずまずの出来」と語る。農業関係者によると、作柄は地域差よりも、播(は)種時期による個人差の方が目立つ。
今年産は、昨秋の台風や長雨で播種作業がずれ込み、生育が遅れたまま越冬した畑もあった。しかし、雪解けが早く、4月以降は日照と雨に恵まれて順調に生育。7月の記録的な高温で、実が入り切る前に成熟が進むと心配されたが影響は少なかったとみられる。
十勝農業試験場地域技術グループの菅原彰研究主任は「昼ほど夜の気温は上がらず小麦の消耗が抑えられた。栄養状態が良かったことで早く仕上がらず、最後まで粘りが効いた」と分析する。また主力品種を「きたほなみ」に転換して7年目を迎え、「農家が栽培方法を手の内に入れてきたこともあるのではないか」と話す。
十勝管内の主要作物のうち最初に収穫期を迎える小麦の出来、不出来は、秋の農繁期に向けた農家の生産意欲や地域の雰囲気も左右すると言われる。昨年は6月中旬以降の日照不足と収穫期の雨で、収量と品質が大きく低下。大豊作だった前年に比べ、十勝産小麦の販売量は半減していた。帯広市上帯広の指導農業士、平山明さん(60)は「大豊作だった一昨年よりは少し落ちるが、昨年よりははるかにいい。あとは調製後の製品歩留まりや成分次第」と期待を寄せている。(安田義教)