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コナガの薬剤感受性低下とキャベツの被害を同時に防ぐ

道総研 中央農業試験場 病虫部 予察診断グループ

1.背景と目的
 コナガはアブラナ科野菜栽培における重要害虫であり、多くの薬剤に対して抵抗性を示す。また、道内では越冬できないため、道内での発生は春先に飛来してくる個体群から始まっている。ジアミド系薬剤はコナガに卓効を示す殺虫剤であったが、2014年に道内でも抵抗性遺伝子を保持する個体が確認された。キャベツではジアミド系薬剤を活用した防除体系が普及しているが、生産現場において感受性低下が顕著となれば効率的な防除は困難となる。本研究では、ジアミド系薬剤抵抗性個体群が飛来する状況において、キャベツでコナガによる被害を許容水準以下に抑制するための薬剤の使用方法について検討した。

2.試験の方法
1)ジアミド系薬剤を用いた防除体系のリスク評価
春季飛来コナガ個体群の抵抗性遺伝子頻度調査、ジアミド系薬剤使用回数と薬剤感受性の低下及びキャベツの被害発生程度調査
2)ジアミド系薬剤感受性低下コナガ個体群に対応した防除体系の検討
各種薬剤の残効性評価、ジアミド系薬剤感受性低下コナガ個体群に対応した防除体系の実証

3.成果の概要
1)春季に道内へ飛来したコナガ個体群におけるジアミド系薬剤抵抗性遺伝子頻度は20%から40%未満で年次や地域による差は小さく、農研機構ガイドライン案において使用に制限がかかる40%を超えないことから、春まき作型のコナガ防除開始時にジアミド系薬剤は使用可能と考えられた(データ略)。
2)ジアミド系薬剤を1作型に1回以上使用する体系はコナガ及び他鱗翅目の被害を安定して抑制した(図1)。世代内でジアミド系薬剤を2回使用する体系ではコナガの抵抗性遺伝子頻度が増加したが、世代内1回以内では低い水準で推移した(図2)。ジアミド系薬剤の使用をコナガの世代内に1回以内とすることで薬剤の効果を維持できると考えられた。
3)平均気温から道内における季節と地域毎にコナガの世代日数を推定した結果、ジアミド系薬剤の使用間隔は5月、6月、7月は全道共通でそれぞれ45日、30日、25日、8月は道東地域で30日、その他の地域で25日、9月は道南地域で30日、道央及び道北地域では45日と考えられた。
4)コナガに登録のある薬剤の残効性を評価し、定植時灌注は14日以上、茎葉散布は7日以上の剤を選定した。さらに農研機構ガイドライン案における各種系統薬剤のコナガに対する殺虫効果順位を参考に、感受性低下リスクを加味したグループ分けを行った(表1)。
5)ジアミド系薬剤の使用を世代内1回以内に制限し、表1のグループA剤とB・C剤のローテーション散布を行う体系では、YES!clean登録基準内の使用回数において、抵抗性遺伝子頻度が増加せず、コナガ及び他鱗翅目害虫による被害も許容水準以下となった(データ略)。以上の結果より、コナガの世代日数を考慮したジアミド系薬剤感受性低下個体群に対応したキャベツにおけるコナガの防除対策の考え方についてモデルに示した(図3)。

4.留意点
1)コナガのジアミド系薬剤感受性低下に対応した防除体系としてキャベツの減農薬栽培に活用できる。
2)本成果におけるジアミド系薬剤感受性低下に対応した防除の考え方は他アブラナ科野菜のコナガ防除に応用できる。


詳しい内容については、次にお問い合わせください。
道総研 中央農業試験場 病虫部予察診断グループ
電話(0123) 89-2001 E-mail:central-agri@hro.or.jp

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