除草剤 なしで雑草 やっつける−前植生の早刈りとライムギを2回刈りしたメドウフォックステイル防除事例−
道総研畜産試験場 畜産研究部 飼料生産技術グループ
1.試験のねらい
強害雑草の1つであるメドウフォックステイル(以下MFT、図1)は、出穂が早く、開花後22日目頃(6月中旬頃)から種子が成熟するため、道内の一般的なチモシーの刈取り管理では、実生によってまん延します(表1上段)。MFT のまん延を防ぐためには、成熟した種子をつける前に刈取る管理が重要です。早刈りと除草剤を組み合わせた防除法(表1中段)が提案されていますが、除草剤を使用できない場合には適用できません。
本報告では、除草剤の代役として秋まきライムギ(以下ライムギ)を導入した耕種的防除法(表1下段)を現地圃場で検証した事例を紹介します。
2.試験の方法
実施場所:中川郡池田町・河川敷のMFT 優占草地(A 圃場;0.6ha,B 圃場;1.0ha)
前植生の 早刈りとライムギ播種(2019年):A, B 圃場ともに1番草が2019年5月31日、2番草は1番草の65日後(8月4日)にそれぞれ収穫しました。8月14日にスタブルカルチおよびロータリーハロで播種床を造成し、9月21日にライムギを播種しました。なお、1番草の収穫時期が、推奨される早刈り時期(6月中旬)から2週間程早くなり、6月21日時点で再生草からMFT の出穂が見られました。このため、推奨時期に収穫が出来ていた場合を想定して、圃場内の一部で穂を除去する「抜き取り区」を設置しました。
ライムギ の2回刈りと牧草播種(2020年):ライムギの1番草を2020年5月30日、2番草を7月6日にそれぞれ収穫しました。その後、2019年と同じ方法で播種床を造成し、8月19~20日に牧草を播種しました。
牧草播種翌年(2021年):草地更新後のMFT の出穂本数や冠部被度を調査しました。
3.成果の概要
1)草地更新翌年(2021年)のMFT 出穂本数は、前植生の早刈りとライムギ2回刈りの草地更新体系を行った2圃場の方が経年草地よりも大幅に少なくなりました(表2)。この体系では、MFT を完全に排除することは困難ですが、除草剤を用いないMFT 防除技術として有望であると考えらました。
2)抜き取りを行っていない区は抜き取り区よりもMFT 出穂本数が多くなりました。その原因は、草地更新前年(2019年)の1番草刈取り時期が早かったことに加え、2番草の生育日数が40日以上となり、2番草の刈取りまでに再生草からMFT の発芽能力を有する種子が生産されたと推測されます。
3)ライムギ2回刈りは1、2番草合わせて582~732kg/10a 程度の乾物収量が確認されたことから、牧草播種当年の粗飼料不足対策になると考えられました(表3)。
4.留意点
前植生の早刈りとライムギ2回刈りの草地更新体系の実践にあたっては、ライムギおよびMFT の生育を確認しながら各種作業を適期に行う必要があります。
詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研畜産試験場 畜産研究部 飼料生産技術グループ 今啓人
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