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乳牛のエサ設計に役立つ -繊維消化スピードの推定方法-

道総研畜産試験場 基盤研究部 飼料環境グループ

1.試験のねらい
 近年の高泌乳牛に対応するため、高度な飼料設計プログラムが普及している。加えて、給与飼料中の栄養成分を整えても、繊維の質(消化スピード)により乳生産量が増減するため、繊維消化スピードの重要性は高い。飼料設計・給与診断には、飼料分析機関での分析値が活用される。飼料分析機関では、簡便・迅速に測定できる近赤外分光法による成分分析(NIRS)を基本としている。繊維全体の量を表す中性デタージェント繊維(NDF)については、各分析機関でNIRS による分析値を提供しているが、消化スピードの算出に必要な複数の培養時間での値については、その対応が整備されていない。

 本試験は、牧草サイレージ(GS)と、とうもろこしサイレージ(CS)のNDF 消化率の提供に向けて、NIRS 用の検量線(近赤外光から分析値を予測する計算式)を開発し、飼料分析機関に導入した。

2.試験の方法
(1)道内各地で収集したGS の462点とCS の341点について、30、120、240時間培養後のNDF 消化率、可消化NDF(dNDF)、未消化NDF(uNDF)を分析した(写真1)。近赤外光を試料に照射した時の拡散反射光の強度を説明変数として、dNDF やuNDF を目的変数とした予測式(NIRS 検量線)を作成した。
(2)分析工程で利用する第一胃の液であるルーメン液(乾乳牛 vs. 泌乳牛)の比較、各分析機関の試験運用での検証、飼料設計プログラムへの入力による検証を行った。

3.成果の概要
(1)GS の培養30時間後の可消化NDF(dNDF30h)、培養120および240時間後の未消化NDF(uNDF120h、uNDF240h)、CS のdNDF30h、培養120および240時間後の可消化NDF(dNDF120h、dNDF240h)を予測するNIRS 検量線を作成し、精度判定は、「C やや高い」~「B 高い」であった(表1)。
(2)乾乳牛または泌乳牛のルーメン液を用いて測定した値に大きな違いはなかった(図1)。分析値は、泌乳牛を含む様々なステージの牛群の飼料設計に利用可能と考えられた。

 試運用の結果、NDF 消化率の予測値が培養時間間で逆転する場合や、負の値あるいは100を超える場合など、異常値と思われる分析値が確認された。その頻度は16,569検体中の1.3%程度と、一般分析項目と同程度の頻度であった。飼料分析機関ではルーメン液を用いたNDF 消化率を測定する実験環境にないため、異常値を提供しない基準を設けた。

 飼料設計プログラム(AMTS 社,NY)での計算結果は、NDF 消化率を入力しなかった場合に、乳量を過大に予測し、実乳量は飼料設計時の期待値を下回った(図2左)。NDF 消化率を入力した場合には、その過大評価が解消され(図2右)、従来よりも粗飼料の繊維の質に応じた飼料設計が可能となった。

4.留意点
(1)開発されたNIRS 検量線は、北海道内向けにフォレージテストを行っている10機関が参画するフォレージテストミーティング(FTM)に導入される。
(2)本NIRS 検量線の適用範囲は、多様な産地、草種、番草、調製条件を含むものであるが、適用の対象外として、NDF 消化率の分析値を提供しない場合がある。


詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研畜産試験場 基盤研究部 飼料環境グループ 田中 常喜
電話(0156)64-0621 FAX(0156)64-6151
E-mail tanaka-tsuneki@hro.or.jp

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