とうもろこしの新しいマルチ栽培の特徴
道総研 根釧農業試験場 研究部 飼料環境グループ
上川農試 天北支場 地域技術グループ
1.試験のねらい
最近道内で導入が進んでいるとうもろこしのマルチ播種機(アイルランド、サムコ社製)は、播種した畦上をマルチフィルムが全面覆うタイプ(以下、新マルチ栽培とする)であり、初期生育が促進されるため栽培限界地帯で通常用いられる品種より晩生な品種が適するといわれている。ここでは、新マルチ栽培でのより晩生な品種の生育パターンおよび収量性を明らかにする。
2.試験の方法
1 )根釧農試場内にて、新マルチ栽培の「36B08」(RM100日クラス)・「P9027」(RM93日クラス)・「39T45」(RM90日クラス)を、無マルチ(以下、露地とする)栽培の「デュカス」(RM80日クラス)または従来マルチ栽培の「39H32」(RM85日クラス)と比較した。「P9027」および「39T45」は、新マルチ、露地、従来マルチの3栽培法で供試した。播種期は2013年は5月24日、2014年は5月19日、2015年は5月14日(従来マルチ区は翌平日に播種)とし、施肥量は、北海道施肥標準に準拠(マルチ区は全層施肥、露地区は作条施肥)した。地温を、5cm 深に埋設した温度データロガーによって計測した。収量調査は年次ごとにそれぞれ10月8日、10月7日、10月14日に行った。
2 )上川農試天北支場内にて、新マルチ栽培の「39T45」、「P9027」、「36B08」および「38V52」(RM95日クラス)を露地栽培の「デュカス」と比較した。播種期は2013年は6月5日(露地区は6月7日)、2014年は6月3日(露地区は6月4日)、2015年は5月29日(露地区は6月1日)とした。収量調査は年次ごとにそれぞれ10月8日、10月6日、10月1日に行った。
3.成果の概要
1)新マルチ栽培の、従来型栽培と比較した特徴は、以下のとおりであった。
① 新マルチによる地下5cm 地温の上昇効果は、従来マルチ(播種穴以外の部分)と同程度か3、4℃低い。新マルチ区の地温の露地区との差は+7~+10 ℃程度であると考えられた(データ省略)。
② 新マルチのフィルムは、播種後概ね30日弱で破れるため、保温効果を失う(表1)。ただし、本試験で供試したフィルムは、比較的破れやすいタイプである。
2 )新マルチ栽培では、RM90日クラス前後の熟期の品種を用いることで、収穫期の熟度(雌穂乾物率)を露地栽培RM80日クラスの品種を用いたのと同等以上にできると考えられた(図1)。TDN 収量は、RM90日クラス前後の品種を用いた新マルチ栽培では、露地80区より20%程度多く、露地90区よりやや多く、従来85と同程度で、従来90(93)よりやや少ない程度であると考えられた(図2)。
4.留意点
1)飼料用とうもろこしの生産者または指導機関等が、畦上被覆マルチ栽培を行う際の参考とする。
2 )本試験のデータは、気象条件が良好な年に、根釧農試および上川農試天北支場場内にて取得されたもので
ある。
詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研根釧農業試験場 研究部 飼料環境グループ 林 拓
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