農に向き合う~農業経営部会会員紹介「幕別・さとう農場」
1.福島県から十勝へ 1945年に農地取得
幕別町中里で、畑作4品やナガイモの生産を手がける。3代目の佐藤朋康さん(40)は、土壌改良で作物の品質向上を実現。大型コンバインを導入して周辺農家の収穫を請け負うなど、地域貢献の意識を持って営農にあたっている。
朋康さんの曾祖父にあたる故直吉氏が、1930年代後半に福島県から小作人として豊頃町に入植。その後数年で中里に移り小作人を続けた。農場の基礎を作ったのが祖父の故貞雄氏。45年に農地を取得し、畑作4品目を生産した。その後父悦啓氏(67)が農地を拡大し、ニンジン、カボチャ、ソバ、ダイコン、手亡、枝豆、ゴボウ、ジャガイモ、小麦、ナガイモを生産。ジャガイモだけでもメークイン、北海こがね、トヨシロなど7種を作付けするなど多品目を生産。ニンジンは幕別町で最初に生産を始めた。
2.土壌改良で収量・品質向上
朋康さんは帯広農業高、士幌高農業特別専攻科を卒業後の2003年に就農。16年に経営を引き継いだ。現在は父と弟瑛人さん(36)と一緒に、畑作4品目(小麦20㌶、ジャガイモ14・3㌶、大豆10㌶、小豆3㌶、ビート7㌶)、ナガイモ6・5㌶、JA幕別町特産の毛のないナガイモ「和稔じょ」を0・2㌶で生産する。父の代から比べ品目を絞った形。朋康さんは「多品目だと手が回らないこともあった。全体がそこそこの収入だったが、手をかければもっと取れると思い品目を減らした」と話す。
土台となる土づくりにも力を入れる。コタニアグリ(更別)小谷行正社長のすすめもあって15年に土壌研究グループ「SRU(ソイル・リサーチ・ユニオン)」に加入。品質のばらつきを抑えるため、土を科学的に分析している。専門家に畑に適した施肥設計をしてもらうなど取り組みを進め「小麦もほぼ毎年同じ量が取れるなど収量が安定した。イモも中心空洞がなくなり、品質が良くなっている」と手応えを得ている。
3.同友会の活動が刺激に
道中小企業家同友会とかち支部・農業経営部会に加入したのは16年。SRUメンバーからの紹介がきっかけだった。加入したのは、ちょうど経営を引き継いだタイミング。同業で様々なことに取り組む人の話を聞きたいとの思いがあった。
19年まで3年間幹事を務め、自身の経営指針を発表する場などを通じ多くを学ぶ。「色々な人の話を聞かないと、考えが似たり寄ったりになってしまう。同友会会員の考え方には刺激を受けている」と話す。
4.面積拡大 コントラ活動普及を
今後は、後継者のいない土地の受け入れも通じて現在61㌶で作付けしている面積の拡大を目指す。労力のかかるナガイモを減らす一方、今年導入した大型コンバインを活用し、大豆や小麦の作付けを増やすことを想定している。
今年はこの大型コンバインを生かし、周辺農家5戸(約40㌶)の大豆の収穫も請け負う予定。収穫時期の10月ごろはビートやナガイモの収穫とも重なり他の農家も忙しいため、地域農家を助ける取り組みにもなる。過去を振り返ると、祖父貞雄さんもトラクタを導入した際に周辺の畑起こしを委託で担っていたという。朋康さんは「コントラ(委託事業)が上手く進めば、受託面積も増やしたい。面積の規模拡大、コントラを通じ地域に貢献していきたい」と意欲的だ。
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