自給濃厚飼料づくりに挑戦 JA帯広かわにし
JA帯広かわにし(有塚利宣組合長)は今年度、自給濃厚飼料「イアコーン」の生産・利用試験に取り組んでいる。円安などで輸入飼料の価格が高騰し、酪農・畜産農家の経営を圧迫する中、コスト削減の可能性を探る。畑作が盛んな地域の特性を生かし、将来的に畑作農家に生産してもらう、耕畜連携も目指す。
農研機構北海道農業研究センター(北農研、札幌市)と共同研究している。
牛の飼料には反すう動物に不可欠な牧草など「粗飼料」と、穀物などエネルギー価が高い「濃厚(配合)飼料」がある。
自給飼料の生産が盛んな十勝でも栽培されているのはほとんどが粗飼料で、酪農で半分以上、肉牛では大半を占める濃厚飼料は、輸入に頼っている。特に栄養価が高いトウモロコシは近年、世界的な穀物需要増や円安で価格変動が激しい。
十勝でも飼料用トウモロコシは栽培されているが、葉・茎も一緒に収穫して発酵させた粗飼料が中心。濃厚飼料では国の政策で飼料用米も注目されるが、十勝は米の主産地でない。
イアコーンは通常の飼料用トウモロコシと品種や栽培方法は変わらず、収穫時期を遅らせて水分を下げ、実と芯と皮のみを収穫して発酵させる。このため栄養価が高く、濃厚飼料を代替できる。
同JAは今年度、JAの試験圃場(ほじょう)や酪農、肉牛農家(トヨニシファーム)の畑10ヘクタールで試験的にイアコーンを栽培。収穫したトウモロコシはロールにして発酵させ、春以降に牛への給与を開始する。
畑作も盛んな十勝中央部で、飼料自給率を上げるためには畑作農家での飼料用作物の栽培が必要となる。
一方、畑作農家は大規模化が進み、省力作物の小麦がやや増えすぎていることが課題。飼料用コーンは小麦以上の省力作物で、畑作農家が小麦に代わる満足な収入を確保できれば、栽培が広がる可能性がある。
約4ヘクタールを試験栽培した市基松町の酪農家・野原幸治さんは「配合飼料価格は世界的な動きに振り回され、農家の手取りが減っている。自分たちでコストを安定させられるなら、他の酪農家にもイアコーンを紹介できる」と話す。
北農研の大下友子上席研究員は「十勝は他地域に比べ、飼料用トウモロコシの収量が多いという強みがある。畑に残った葉や茎などは畑の土づくりにも良い。畑作農家への恩恵もあるように、連携を少しでも進められれば」とする。
現在、JA帯広かわにしと北農研は、来年の栽培計画や飼料給与の方法などを協議中。同JAは「実際に牛に食べさせて結果が出れば、広まっていく可能性がある。今年は畑作農家にも栽培現場を見てもらえるようにしたい」(畜産部)としている。(眞尾敦)
北農研が2009年度から家畜改良センター十勝牧場(音更町)などと研究を進めてきた。同牧場で試験的に栽培・給与している他、道内の民間では上川管内美瑛町、オホーツク管内津別町の酪農で実用化されている。胆振管内安平町では畑作農家で生産され、芽室町内の肉牛農家で使われている。