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4病害抵抗性で多収のてんさい新品種「HT50」

道総研 北見農業試験場 研究部 麦類畑作グループ
道総研 十勝農業試験場 研究部 豆類畑作グループ
道総研 中央農業試験場 作物開発部 作物グループ
道総研 上川農業試験場 研究部 生産技術グループ
(一社)北海道農産協会

1.背景
 てんさい作付け地域には、土壌の排水性が不良であるため病害の発生しやすい圃場がかなり存在し、そのような圃場では、耐病性に優れる品種が栽培されてきた。
 耐病性品種の一つである「リボルタ」(平成22年北海道優良品種認定)は、てんさい栽培において特に問題となるテンサイそう根病、テンサイ褐斑病、テンサイ根腐病、テンサイ黒根病の4病害すべてに抵抗性を持つが、収量面で欠点を持つ。そこで、収量性が向上した「バラトン」(令和2年北海道優良品種認定)が、「リボルタ」を置き換える形で普及してきた。しかし「バラトン」は4病害抵抗性を持つものの、褐斑病抵抗性と根腐病抵抗性が「リボルタ」より弱い。そのため病害発生が激しい圃場では、「リボルタ」が栽培され続けている。以上のことから、「リボルタ」並の優れた耐病性と「バラトン」並の収量性を兼ね備えた品種が必要とされてきた。

2.育成経過
 スウェーデンのDLF BEET SEED種子会社が育成し、令和元年に北海道糖業株式会社(以下 北糖)が輸入した。令和2年から道総研(北見農試、十勝農試、中央農試、上川農試)、北海道農産協会(ホクレン、北糖、日本甜菜製糖株式会社)で各種試験を実施し、令和5年に北海道の優良品種に認定された。

3.特性の概要
 置換対象品種は、「リボルタ」、「バラトン」である。以下では、置換対象品種と比較して特性を説明する。
1)病害抵抗性等 「リボルタ」、「バラトン」に対する病害抵抗性等の比較を、表1に示す。4病害抵抗性で、褐斑病と根腐病の抵抗性が「バラトン」より1ランク高く、「リボルタ」並である。根腐病抵抗性検定試験の結果を表2に示す。発病程度は、令和2年と3年に「リボルタ」より低く、腐敗根率は“中”品種の腐敗が多かった令和2年に「リボルタ」より低かった。これらのことから根腐病抵抗性は“強”品種の中でも強いと考えられる。抽苔耐性は、「リボルタ」、「バラトン」と同様の“やや強”である。
2)収量性 研究機関で行われた全道平均を、表3に示す。「リボルタ」と比較して、根中糖分は並だが、根重と糖量はやや多い。「バラトン」と比較して、根重はやや少なく、根中糖分はやや高く、糖量はほぼ並である。
3)形態 草姿は「リボルタ」、「バラトン」の“直立”に対して“中間”、葉長は「バラトン」の“長”に対して「リボルタ」と同様の“中”。葉色は、「リボルタ」、「バラトン」と同様の“濃緑”、葉面縮(葉の表面の皺)は、「リボルタ」、「バラトン」より少ない“少”。葉柄長は、「バラトン」より短く「リボルタ」と同様の“やや短”。根形は 、「リボルタ」、「バラトン」の“円錐”に対して“やや短円錐”。根周は「リボルタ」、「バラトン」よりやや大きい“やや大”である。

4.普及態度
 「HT50」は、「リボルタ」と同じ強さの4病害抵抗性を持つ。また、収量性については、糖量が「リボルタ」より向上しており「バラトン」並である。
 以上から、「HT50」をすべての「リボルタ」、および大部分の「バラトン」に置き換えて普及させることで、てんさい生産と農家所得の安定と向上に寄与できる。適地は北海道で、普及見込面積は6,000haである。
 栽培上の注意は、抽苔耐性が“やや強”であるため、早期播種や、移植栽培における育苗時の過度の低温による馴化は避ける。


詳しい内容については、次にお問い合わせください。
道総研十勝農業試験場 豆類畑作グループ
電話(0155)62-2431 E-mail:tokachi-agri@hro.or.jp

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