十勝毎日新聞移動編集局ｉｎ大樹フォーラム
右上：伏見悦夫氏
左上：大滝誠一氏
右下：永田晴紀氏
左下：福岡孝道氏
宇宙開発 大樹から発信
【大樹】フォーラムｉｎ大樹「ひらけ！ 宇宙への扉」（町、十勝毎日新聞社主催）が１０日、町生涯学習センターで開かれた。ＮＰＯ法人北海道宇宙科学技術創成センター（ＨＡＳＴＩＣ、札幌）の伊藤献一理事長が「北海道スペースポート計画」と題して基調講演。パネル討論では「北海道の宇宙開発」をテーマに、町内外の航空宇宙関係者が意見を出し合った。要旨を紹介する。（文中敬称略）
航空公園を拡大・拡充 伏見氏
ものづくりを次世代に 大滝氏
開発予算の大樹集中を 永田氏
子供の夢の広がり実感 福岡氏
小野寺 最初に、それぞれの取り組みを。
伏見 １９８５年に航空宇宙産業基地構想の話があり、夢を抱きながら２５年間やってきた。現在も大樹町多目的航空公園では、宇宙航空研究開発機構（ＪＡＸＡ）などによるさまざまな実験が行われている。地域や道内外の関係団体の協力、さらには十勝が一体となって大樹町を応援してくれている結果だ。２０１１年２月には、小惑星探査機「はやぶさ」の帰還カプセルも町内で展示される。これまでの地道な活動が実を結び始めているのでは。
大滝 道工大などによる実験チームのメンバーとして、２０００～０４年に町多目的航空公園で「ハイブリッドロケット回収系実験」を実施した。このうち０４年の「有デルタ翼付きハイブリッドロケットの滑空実験」では完全回収型のロケット開発のため、道工大と北大が共同し、三角形の翼を付けたハイブリッドロケットを打ち上げ、ラジコンで回収する実験をした。ロケットにデルタ翼を付けたのはおそらく世界初で、最も大がかりなものだった。
永田 ＣＡＭＵＩ（カムイ）型ハイブリッドロケットを開発している。道産や低価格などの特徴がある中、火薬を使っていないので安全性が高く、ロケットを間近で見ることも可能だ。大樹では０２年から打ち上げ実験を始め、０９年にはＪＡＸＡがこのロケットを使い、宇宙往還機などに使用するエンジン部分の性能実験を行った。今後は超音速実験もできるようロケット開発を進めていきたい。
福岡 スペース研究会は８９年ごろ、宇宙のまちづくりを進める大樹町に、民間でも何かお手伝いをしようと発足した。子供たちを対象にした事業では、ペットボトルロケットやスペースイラストの各コンテストがある。イラストでは最近、宇宙空間に飛び出した作品が多く見受けられ、回を重ねるにつれ、子供たちの夢が広がっているのを感じる。
小野寺 宇宙開発でこれから取り組みたいこと、北海道に望むことは。
伏見 宇宙への玄関として、町多目的航空公園を拡大・充実させていくことが次へのステップ。子供たちが夢を持ち、できれば大樹や十勝から航空宇宙の科学者や技術者、宇宙飛行士が誕生してほしい。
大滝 スペースポート計画の推進と実現化のためには、多目的航空公園の大型化が必要。青少年への宇宙教育を推進する必要もあり、航空宇宙を通じて、ものづくりの大切さを次世代に伝えたい。
永田 数百万～数千万円規模の実験をするには、特別な射場設備が必要になり、技術追求をするためにも安全確保が重要になる。基盤整備が必要だ。日本の宇宙開発予算は、２０００億円規模がある。そのうちのかなりの部分を、大樹町に費やすべきではないか。
福岡 スペースイラストコンテストの規模を拡大し、全道から絵を集めて展示できたらいい。小さい頃から子供に夢を持たせることが大切であり、そのための努力をしていきたい。
伊藤 伏見町長が航空公園に「多目的」という言葉を入れたのは先見性があった。航空公園を発展させ、日本の航空宇宙開発に生かさなくてはいけない。さらに、大樹町民のホスピタリティーやサポートは素晴らしい。航空宇宙で困った際には大樹町で答えが見つかるというような、日本にとってかけがえのない土地になるのでは。
小野寺 宇宙開発は世論や予算の動向で良い時も悪い時もあるが、息の長い取り組みが必要。本紙も、大樹町を中心とした宇宙開発の動きを今後も追い続けたい。
■パネラー（順不同）
伏見悦夫氏 大樹町長
大滝誠一氏 ＮＰＯ法人北海道宇宙科学技術創成センター事務局長、北海道工業大学名誉教授
永田晴紀氏 北海道大学大学院教授
福岡孝道氏 大樹スペース研究会事務局長
■アドバイザー 伊藤献一氏
■司会 小野寺裕（十勝毎日新聞社執行役員編集局長）
