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配達網支え半世紀、かちまい栄の河野さん引退 15日から新聞週間

事業承継に伴い西18北1へ移転したかちまい栄で、変わらず配達業務を続ける河野さん(須貝拓也撮影)

 帯広市内の十勝毎日新聞販売店「かちまい栄」の店主だった河野弘昭さん(69)が9月末で引退した。地域に新聞を届け続けて半世紀。「大変なことも多かったけれど、地域の読者と従業員、仲間の販売店主たちのおかげで続けられた」と感謝を口にする。15日から新聞週間-。(丹羽恭太)

 河野さんは留萌管内増毛町生まれ、同管内羽幌町育ち。炭鉱の町で燃料や米を扱っていた実家が、閉山に伴い移住した先の広島県で高校を卒業。京都の織物会社での営業職を経て、帯広市内で新聞販売店を営んでいた親類に請われ、20歳で新聞販売の道へ入った。

 「当初は部数が少なく、収入も安定しなくて大変だった」が、10年余り勤め上げ、1991年に独立。以来34年間、西16~20条の帯広川以北、住宅街から商業地、工業団地まで混在するエリアの配達網を、妻利子さん(67)と二人三脚で守ってきた。

 「店の奥でふんぞり返っているような店主にはなりたくなかった」と、番頭に相当するいわゆる「専従」は置かず、自ら配達にも汗を流した。配達に出れば、庭仕事をしている住民と会話が弾むことも。それが大切な営業活動でもあった。地域に深く入り込み、そこで得た購読者の状況を営業に生かすスタイルは、他の店主仲間から「勘ピューター」と称された。

 全国的にはびこる、新聞発行本社が販売店の生殺与奪権を握るかのような風潮を否定し、「本社と販売店は対等」と主張。本社の販売政策が読者や販売店のためにならないと思えば、異を唱えることもいとわなかった。そうした姿勢が買われ、2016年から4年半、十勝毎日新聞の販売店組織「かちまい会」の会長を務めた。

 部数減や配達員の確保難など、新聞販売店を取り巻く環境は厳しさを増しており、不本意な形で店を畳む例も少なくない。そうした中で、河野さんがかねて決めていた70歳を区切りに引退したことに、販売店主の一人は「こうしてきちんと『卒業』できた店主は、帯広市内ではいないのでは」とたたえる。

 かちまい栄は1日から、「かちまい木野」(音更町、谷口豊隆店主)が引き継いだ。「経営だけではなく、河野さんの思いも引き継ぎたい。これまで通り、地域の人たちに必要とされる店にしていきたい」と谷口店主(49)。河野さんは「息子に引き継いだような感じだな」とほほ笑み、新店が軌道に乗るまで、しばらく利子さんと共に配達を続けるつもりだ。


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  • (須貝拓也撮影)

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