余命宣告受けた母のため写真集制作 帯広のフォトグラファー後藤さん
帯広市在住のフォトグラファー・後藤貴子さんは、写真集「TOKACHI 大地に根差して」を制作した。余命宣告を受けた母和子さん(今年8月2日、95歳で死去)に「自らの活動を知ってほしい」との思いから、農業や自然など、十勝の四季折々の情景を一冊にまとめたという。「ライフワークを見てもらえた。これからも自分の目に映ったものを撮影したい」と話す。
後藤さんは帯広市出身。同市内の印刷会社で広告写真撮影などを担当していたが独立し、現在は農業や風景の撮影などを中心に活動する。2017年から約5年間、十勝毎日新聞社の写真専属通信員として、管内の日々の動きも追った。
写真集は計44カットをA4判48ページにまとめ、今年6月初旬に完成。躍動する馬たちを表現した「農用馬・馬追運動」のほか、十勝の日常の光景を感じさせる「じゃが芋植え付け作業」や「春耕風景 縞模様」「夜っぴて収穫作業」「長いも畑夕景」「収穫を終えて」、和子さんが車いすで六花亭アートヴィレッジ中札内美術村を散策した「散歩道」、冬の厳しさを伝える「下金山の踏み切り」など、十勝とその周辺の季節の移ろいを感じさせるカットを収めた。
写真集を手に取った和子さんは、十勝で過ごした幼少期も思い出しながら、「写真は残しておくべき」と力強く語ったという。後藤さんは「自分の活動のすべて、人生の軌跡も見てもらった」。母と過ごした哀歓を思い出しながら語る。
初の写真集の制作で、「これまでの歩みを一番知ってもらいたい人に見てもらえた」と話す後藤さん。今後は写真集の縮小版を作る一方、めいで、現在は東欧チェコのプラハ市を拠点に活動するピアニスト・法岡真央さんや、友人らと「先々は、演奏と写真を組み合わせた催しを開催できれば」とも話す。(松岡秀宜)