NC札幌進出で全道に営業網 所社長に聞く
信販会社・NCカード(帯広市、所紀夫社長)は、同じ日商連系のほくせん(札幌市)のショッピング事業の継承を目指し、4月中にも札幌に支店を開設する。さらに営業エリアが広がることで長年使ってきた社名(エヌシーおびひろ)を22日付で変更した。近年急拡大するキャッシュレス決済市場だが、異業種も参入し競争は激化している。今年度で創業70周年を迎えた同社の所社長に、札幌進出の狙いや今後の戦略などについて聞いた。(聞き手・佐藤いづみ)
ほくせんから事業引き継ぎ
-札幌進出の経緯は。
ショッピング事業の撤退を決めたほくせん側から昨年末、会員の引き継ぎ先になってほしいと話があった。後発で経費もかかり、競争も厳しいと思ったが、ゼロからの進出ではなく、(ほくせん会員という)土台があった。基幹システムが同じだったことも大きな決め手になった。
-具体的な営業戦略は。
ショッピング事業におけるほくせん会員をそのまま承継するM&Aではない。会員に契約変更を呼び掛ける優先権があるだけなので、実際に切り替えてくれるかは今後の動き次第。ほくせんは会員約22万件の半分がショッピング事業分。うち、ETCカードや新聞、電気などの料金払い、いわゆる「継続決済系」が5万5000件ほどあり、この部門をできるだけ取り込んでいきたい。
場所は調整中だが、4月中に約10人体制で札幌支店を開設する。会員を取り込めると、加盟店も増やせる可能性がある。焦らず進めたい。
-社名から「おびひろ」を外した。
過去、M&Aなどで営業網を十勝以外にも広げてきた。ほくせんのショッピング事業撤退で、日商連系で同事業を展開するのは道内で当社だけになった。地名がない方が分かりやすいと思った。ただ、地域に根差した営業をしていくため、本支店の屋号は「NCおびひろ」「NCきたみ」など地名を残している。
-本社機能を帯広以外に移す可能性は。
現時点では全く考えていない。基幹システムなどバックオフィスが帯広にあることにハンディはなく、費用をかけて(他地域に)移すメリットもない。
-近年の信販業界は。
10年ほど前、全国的に体力のない地方信販会社などが淘汰(とうた)された。貸金業法などが改正、上限金利が設けられたことで、利用者側からの過払い金返還請求などが全国的に相次いだことで経営環境が悪化し、合併や解散した事例が増えた。
その後、アマゾンなどネット通販の急伸でクレジット決済市場も急拡大。一方で不正利用も急増し、ICカード対応などシステム導入に多額の投資が必要に。PayPayなどに代表される電子決済など異業種との競争も厳しく、信販業界は2次淘汰の時代に入っている。
取扱高を700億円に
-創業70周年、NCカードとしての生き残り策は。
まずは札幌進出で取扱高を300億円上乗せし、700億円にしたい。
また、スマホなどさまざまな決済方法はあるが、購入法が店舗からネットに変化したとしても、クレジットカードは今後もなくならない。ショッピング事業では高齢化が進む中、大手の隙間を縫って、地域の中高年層をターゲットにしたサービス、寄り添ったビジネスを展開していけば勝機はあると思う。
周年事業はコロナで式典は行わない予定。記念誌の制作は進めている。
◇ ◇ ◇
ほくせんは今月の臨時株主総会で、8月末での主力のショッピング事業から撤退、キャッシングと不動産事業に特化することを公表した。道央や道南などが営業エリアで、取扱高は647億円(2021年8月期)。
<NCカード>
1951年協同組合帯広連鎖店を設立。63年帯広クレジット(エヌシーおびひろ)とした。2010年釧路日商連を吸収分割しクレジットカード事業を継承、15年旭川進出、19年青森日商連を子会社化。取扱高400億円(21年3月期)。北見と釧路、旭川、網走に支店。