大樹 ISTのモモ改良が完了 夏に2機打ち上げへ
【大樹】大樹町内のベンチャー企業インターステラテクノロジズ(IST、稲川貴大社長)は1日、観測ロケット「MOMO(モモ)」の全面改良が完了したと発表した。稲川社長は「昨年夏から大幅に改良を進めた。打ち上げの信頼性向上、量産化につながる」と自信を示した。今夏に7号機、6号機の順に町内で打ち上げるとし、新型コロナウイルス感染防止対策として、日時は直前公表、完全無観客で実施するとした。
モモは、2019年5月打ち上げの3号機が国内初となる民間単独開発での宇宙空間(高度100キロ)到達に成功した。その後は宇宙に届かず、昨年6月の5号機はエンジンノズルが破損。同7月の7号機はエンジン点火器の不具合で打ち上げを延期した。そのためISTはこれまでの不具合などを検証し、モモの全面改良に踏み切った。
エンジン性能向上
1日は町内で記者会見を行い、IST創業者の堀江貴文氏と稲川社長が出席。新型の「モモv1」について、▽エンジン▽電子機器▽機体装備▽地上設備-の4点を重点的に改良したと説明した。
エンジンは点火器2基の性能を向上させ、1基のみでも着火できるよう改良した。ノズルは一部にSFRP(シリカ繊維強化プラスチック)を採用し、アルミ素材で保護するなど強度をアップ。推進剤を噴射するインジェクターは、推力向上を図りながらも圧力損失を低減する設計とし、軽量化も図った。
新型エンジンの燃焼試験は5月までに計29回実施。エンジンの推力は従来の1・2トンから1・4トンに増強し、4月中旬には143秒間と過去最長の燃焼時間を達成した。
また、部品のユニット化を図って運用しやすい仕様とし、電子部品は精度や耐故障性の向上を行った。全長は10・1メートルと20センチ伸びた。稲川社長は「製造や性能のばらつきをなくし、保守しやすい機体になった」と述べた。
今後のスケジュールとして、6月下旬には実際に打ち上げる機体を固定し、本番同様にエンジンを燃やす「実機型統合燃焼試験」を実施。その後に最終リハーサルを行い、打ち上げ可否を判断する。
ゼロに向け実証
7号機はサンコーインダストリー(大阪)が「ねじのロケット」と命名し、デザインは、ねじのドリルをイメージ。花キューピット(東京)がバラの花1輪を宇宙へ届けるなどの試みを行う。6号機は宇宙空間に企業キャラクターのフィギュアを放出する。稲川社長は「7号機、6号機は同時並行で製造している。関係者と協議しながら、なるべく短い間隔で2機を今夏に打ち上げたい」と話した。
堀江氏は「経営的には厳しい判断だったが、1年間打ち上げを行わず、バージョンアップに専念した」と説明。23年度打ち上げ予定の人工衛星軌道投入用ロケット「ZERO(ゼロ)」に向けた技術実証の面でも重視し、「次の打ち上げは非常に重要。モモを確実に打ち上げることがゼロにつながる」と述べた。(松村智裕)