大樹の宇宙産業 企業に発信 札幌でセミナー
IST社長「連携深め技術確立」
【札幌】道内宇宙産業の可能性を考える「北海道宇宙ビジネスセミナー」が14日、札幌市内で開かれた。北海道大学大学院理学研究院の高橋幸弘教授らが講演、大樹町の酒森正人町長や同町のロケットベンチャー・インターステラテクノロジズ(IST)の稲川貴大社長らがパネルディスカッションを通じ、企業関係者や研究者に宇宙関連産業の魅力をアピールした。
道や北大R&BP推進協議会などの主催。毎年実施し、今年で4回目。今回は新型コロナウイルスの感染対策のためにオンライン配信を併用した。会場参加は50人、ウェブ会議による出席は80人。
高橋氏は小型衛星に搭載したカメラによる地球監視技術の研究動向を紹介。「農業や漁業、森林監視などの分野でニーズが豊富な北海道で地球監視の技術とサービスを磨きあげれば将来、“輸出”の可能性が広がる」と強調。「今までにない宇宙の使い方を北海道から世界に広げたい」と目標を語った。
トヨタ自動車・先進技術カンパニーの井上博文エグゼクティブバイスプレジデントはウェブ会議システムを使って講演し、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と共同開発する月面探査車「ルナ・クルーザー」のプロジェクト概要を説明した。「開発を通じて燃料電池、通信、素材技術の向上を図り、人材も育成する。北海道の皆さんと同じように、われわれもチームジャパンとして宇宙ビジネスに貢献したい」と述べた。
酒森町長や稲川社長らはパネルディスカッションで、大樹町の取り組みをアピール。酒森町長は「ISTによる小型ロケットの打ち上げ成功により、大樹が(鹿児島県の種子島、内之浦に次ぐ)国内3番目の射場としての地位を確立できた。海外を含めた民間の宇宙ベンチャーが広く活用できる『みんなの射場』を北海道につくりたい」と語った。
稲川社長は「小型ロケットのMOMO(モモ)は来年以降、量産のフェーズに入る。部品などの製造で道内企業と連携する部分も増えており、道内のパートナーと絆を深めながら量産技術を確立したい」と述べた。(奥野秀康)