宇宙ファンドの出資へ「好感触」 大樹ロケット射場で元トヨタ副社長の加藤氏
【大樹】トヨタ自動車元副社長で豊田中央研究所前会長の加藤光久氏(67)=同研究所アドバイザー=と、トヨタ自動車やメガバンクが出資した「宇宙フロンティアファンド」の関係者が14、15の両日、大樹町を訪れ、ロケットの射場整備を目指す北海道航空宇宙企画(HAP、大樹町)などへの出資に向けて現地を視察した。加藤氏は15日午前、大樹町内で十勝毎日新聞の取材に応じ、「ファンド関係者には出資対象としてHAPに好感触を持ってもらえたはず。宇宙版シリコンバレーのまちづくりにも関わっていきたい」と述べた。
HAPの顧問でもある加藤氏はファンドの立ち上げを働き掛けた一人。加藤氏のほか、ファンドを運営するスパークス・イノベーション・フォー・フューチャー(SIF)の見學信一郎社長らが訪れた。
ベンチャー企業インターステラテクノロジズ(IST、稲川貴大社長)の工場や射場、町多目的航空公園などを見学。酒森正人町長やIST創業者の堀江貴文氏らも同行し、町が掲げる「北海道スペースポート(宇宙港)構想」やISTの取り組みを説明した。
加藤氏は「(ファンドは)オールジャパンの技術を結集し宇宙産業を前に進めようという取り組み。日本の技術を磨くためには、多くの宇宙ベンチャーが使える射場という拠点が必要」と強調した。
13日には鈴木直道知事とも面会。「『道としても応援したい』との言葉をいただいた。道経連の宇宙版シリコンバレーのビジョンのように、大樹をロケット関連のもの作り拠点とするため、仲間作りを進めたい」と話した。
ファンド関係者との視察は「互いに気づきがあり、非常に意味があった」と語った。HAPが10月にも移行する事業運営会社については、「コロナ禍の中、遠い将来ではなくスピード感を持って、ストーリーを構築する必要がある」と述べた。(松村智裕)
<宇宙フロンティアファンド>
宇宙企業の育成を目的にトヨタ自動車、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行などが計82億円を出資し、投資会社スパークス・グループ子会社のスパークス・イノベーション・フォー・フューチャー(SIF)が6月から運用を開始した。12月末までを目途に追加出資を募り、150億円規模を目指す。