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終戦73年目の十勝「トーチカをテーマに 9月に展示会」

実物大トーチカやアート作品を通じて平和を伝える展示会を企画している「T・A・L」の(左から)山下さん、八重柏さん、飛岡さん、古川さん、阿部さん、安田さん、小野寺さん

 太平洋戦争で米軍上陸に備えて十勝沿岸に作られたコンクリート製の防御陣地「トーチカ」を題材に、管内のさまざまな分野のアーティストたちが作品をつくり、9月に帯広市内で展示会を開催する。トーチカをアートとして捉えた作品や実物大の模型を制作し、次世代に平和への思いをつなげていく考えだ。きょう15日は終戦の日-。 (松田亜弓)

 トーチカは米軍上陸に備えて作られ、管内では広尾から浦幌までの太平洋沿岸の海岸線に残る。しかし70年以上の時を経て、海岸浸食や風化などで徐々に原形を失いつつある。

 展示会を企画したのは、十勝管内の異なる分野の作家たち10人によるグループ「T・A・L(Tokachi Art Links)」(古川こずえ代表)。「T・A・L」の展示会は昨年に続き3回目。

 写真家の古川代表(大樹)は町旭浜の出身で、幼い頃はトーチカが「遊び道具の感覚だった」という。戦争やトーチカについて考え始めたきっかけは、戦後50年の1995年にイギリスに留学したこと。日本人が非難されたり、バスを待っていて高齢者から罵声を浴びせられたりした経験から、戦争が「教科書で学んだことだけではない」と思い知らされたという。

 帰国後はトーチカの撮影に幾度も足を運び、現在までたくさんの写真を撮りためた。「トーチカを知らない人も多い。実際に知ってもらいたい」とかねての強い思いを、アートとの融合を通じて発信する。

 展示会「Freedom of expression(表現の自由)」は9月20~25日、帯広市民ギャラリーで開催する。会場には旭浜にある、奥行き4・4メートル、幅3・3メートル、高さ2・7メートルのトーチカ1基を再現。日本建築学会歴史・意匠委員会委員でトーチカ研究を続ける小野寺一彦さん(帯広)の設計の下、廃棄予定のダンボールを使い、実際に中に入って構造や狭さが分かるようにする。

 壁面や床には書道の八重柏冬雷さん、高橋玄禅さん、白石弥生さん、写真の古川さん、山下僚さん、現代アートの阿部安伸さん、俳句の安田豆作さん、郷土史の飛岡久さん、伊藤昭廣さんの計9人の作品を飾り、さまざまな分野からトーチカをアートとして表現する。

 期間中には安田さんが展示する俳句の朗読、ギャラリートークなどのイベントも予定。古川さんは「次世代を担うたくさんの人たちに、今も海岸に残るトーチカを通じて戦争という愚かなことを知ってほしい」と願い、準備を進めている。

<トーチカ>
 分厚いコンクリート製の小型陣地で、ロシア語で「点、地点」を意味する。敵を迎え撃つ小窓のような穴「銃眼」が複数ある。太平洋戦争末期に作られ、完成を急ぐ必要があったため、建造には地元住民らも多数動員された。十勝管内には現在は広尾町から浦幌町にかけて30基以上が見つかっている。

関連写真

  • 十勝の海岸線に今も点在するトーチカ(大樹町旭浜地区)

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