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地域医療確立を 震災経験した川村医師、清水赤十字に

「最先端の医療はどこでもできることを実践したい」と話す川村医師

 【清水】宮城県の仙台赤十字病院で東日本大震災を経験した川村雄剛(ゆうご)医師(32)が、清水赤十字病院(町南2条2丁目、藤城貴教院長)に内科医として着任した。住民の健康を地域全体で支える「地域医療」の体制確立を志し、「最先端の医療はどこでもできることを実践したい」と抱負を語っている。

 1983年、仙台市生まれ。杏林大医学部卒。専門は消化器内科。研修医として仙台赤十字病院に勤務していた2011年3月に東日本大震災が発生した。病院は282人の入院患者を抱えながら、断水・停電、電話も不通とライフラインが全て遮断。1週間は一歩も外へ出ず、家族を院内へ避難させながら、不眠不休で負傷患者の受け入れなどに奔走した。

 電子カルテが消失して投薬や病歴などデジタル化した患者情報が取り出せず、診療経過や処方箋を手書きで記していった。電話不通で外部と連絡が取れないため、受け入れを求める救急車が知らないうちに到着する状況。「情報の大切さを身に染みて思い知らされた」と振り返る。

 治療の優先度を決定して選別する「トリアージセンター」も設置される野戦病院さながらの中、「専門分野を言ってはいられなかった。医師になった以上、診療に幅を持ってやらなければならない」と考え方が変わった。災害医療の経験が、専門分野の治療の枠組みにとらわれない「地域医療」を目指すきっかけにつながった。

 震災から約4カ月後、地域医療の研修先として派遣されたのが清水赤十字病院だった。当時消化器内科部長だった藤城院長の下で1カ月間学んだ。限られた医療資源を最大限に活用し、さまざまな分野でレベルの高い医療を提供する藤城院長の「心の持ちよう・やりようで最先端の医療はどこでもできる」という姿勢に感銘を受けたと話す。

 その後、昭和大学横浜市北部病院、川崎市新百合ヶ丘総合病院などの消化器内科で経験を積み、「清水町でこれまで培った技術を提供したい」と、常勤医として1日付で清水赤十字病院に着任した。

 仙台で痛感したのは、災害にも強靱な地域医療情報の連携の必要性だ。清水町内には独居高齢者なども多くいる中で「生活支援を一体化し、一人ひとりの家庭背景や環境に加味した治療をすることが大切。情報通信技術を活用した介護・福祉分野などとの連携が不可欠になる」と強調。「話を聞き不安を取り除くことで治る治療も大事にしていきたい」と話す。

 妻(31)と長女(4)長男(1)も来春には町に転居して来る予定。「キャンプやラフティングなど十勝の自然を家族で楽しみたい」と家族での十勝暮らしも楽しみにしている。
(小寺泰介)

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