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無料で食事ができる「ゴチメシ」が話題 広小路の飲食店

「ゴチメシをきっかけに善意の輪が広がれば」と話す本間さん

 帯広・広小路にある飲食店「結(YUI)」(西2南8、本間辰郎店主)が「ゴチメシ」を始めて1年余り。客が第三者のために先払いし、希望者が無料で食事できる仕組みだが、これが最近、テレビなどで紹介され、同店に問い合わせが殺到している。「ゴチメシ用の資金をネット上で集め、店に寄付したい」との申し出もあるなど、共感の輪が広がりつつある。

 店主の本間さん(58)は帯広出身。大学卒業後、東京に本社がある大手建設会社に就職。44歳で早期退職し、2014年3月、地場産食材を使ったうどん、そばを提供する立ち食い麺の店を現在地に構えた。

 「ゴチメシ」を始めたきっかけは、開業当初にフェイスブックで知った「保留コーヒー」という言葉。常連客などが支払いの際、釣り銭を店に預け、貧しい人たちのためにコーヒー代を肩代わりする、イタリア発祥の寄付行為を指す。

 趣旨に共感し、商店街の集客にもつながると直感した本間さんは「コーヒーは高くても1杯500円。麺類の価格も同程度だし、うちの店でもできるんじゃないか」と同年11月、「保留麺」と銘打ってスタートさせた。1カ月後、より意味が伝わりやすい「ゴチメシ」に改称した。

 当初は予想に反し、利用客はさっぱりで、広小路でダンスをしている高校生に声を掛けながら宣伝して回った。本間さんは「地元産の野菜や小麦を、うんと食べさせたい思いで飲食店を始めた。最初は自分で連れてきた高校生に“ゴチ”していた」と笑いながら振り返る。

 口コミで評判が広がり、利用客がぽつぽつと出始めると、「ゴチになる客」より「ゴチする客」の方が多いことに気付いた。「お釣りはゴチで」と釣り銭を預ける客や、「若い子に食べさせて」と1万円を別に置いていく年配者も。

 「ゴチになる客」には善意のお金である旨を必ず説明する。結果、ごちそうになることで「ゴチする客」に変わる人も多い。「ありがとう」と、きれいに食事を平らげた後日、「先日の恩返し」と小銭を握って来店した中学生もいた。

 「ゴチする客」は月に約15人、「ゴチになる客」は数人程度という。本間さんは「人に優しくされて誰も悪い気はしない。豊かになった今の時代、他人のために役立ちたいと思う人は多いのでは」と話し、「利害とは無縁の温かい心は連鎖する。ゴチメシをきっかけに善意の輪が広がれば」と期待している。(安倍諒)


◆結(YUI)について
結(YUI)-ウェブサイト

関連写真

  • 「ゴチメシをきっかけに善意の輪が広がれば」と話す本間さん。看板にはメニューごとに現在の“ゴチ数”が書かれている

    「ゴチメシをきっかけに善意の輪が広がれば」と話す本間さん。看板にはメニューごとに現在の“ゴチ数”が書かれている

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