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広小路の浅原栄陽堂、創業100周年

100周年を迎えた浅原栄陽堂の店内と吉田社長(左)、妻の陽子さん

 帯広市内の広小路商店街のCDショップ「浅原栄陽堂」(大通南9、吉田克司社長)が今年、創業100周年を迎えた。現在残っているCD・レコード店では帯広はもとより、道内でも最も古いとされる。格安レンタルや宅配サービスはもちろん、今やネットから簡単に音楽をダウンロードできる時代にあって、吉田社長(66)は「生涯現役。今後もお客さんの要望にしっかり応えていきたい」と話している。

 店の始まりは、1915年4月、後に2代目、3代目となる浅原家と親戚関係にあった故吉田繁之助さんが開業した「吉田栄陽堂」。当時は絵はがきや書籍、万年筆、真空管、レコードなど文化的な雑貨を扱っていたが、80年代前半、大型電器店の帯広進出などに伴い音楽関係に特化した。

 現在、店内にはカセットテープも含めると約1万タイトルが並ぶ。オールジャンルを扱う中で演歌や歌謡曲が5割を占め、自主制作版の演歌なども約30人分取りそろえる。

 4代目社長の克司さんは帯広三条高校を卒業して横浜で電電公社(現NTT)に勤務。妻の陽子さん(66)と結婚後、故郷に戻り、陽子さんの実家である「浅原栄陽堂」を89年に継いだ。音楽には疎かったが、先代や来店客に教えを請いながら知識を深めた。今では無名の演歌歌手の名前を尋ねられても、すぐに察しがつくという。実際、他店で目当てのCDを見つけられなかった客が「栄陽堂を紹介された」と言って訪ねて来る。

 克司さんの豊富な知識を頼って、常連客でも、自らCDを探そうと店内を動き回る人は少ない。「こんな曲を聴いたんだけど」と話し掛けるだけ。「何の曲だろう?」と“解答”を考えることが「仕事の面白さ」だと克司さんは言う。

 思い出に残るエピソードがある。7年前、1人の小学生の女の子が母親と来店した。購入したのは演歌のシングルCD。不思議に思って尋ねてみると、演歌を練習しているのだという。「一節歌ってみて」とお願いし、歌唱力に度肝を抜かれた。「あまりに上手でびっくりした。音程も完璧だった」と克司さん。女の子が帯広出身の演歌歌手「さくらまや」としてデビューするのは、そのすぐ後だ。

 2007年には大手インターネットショップで「演歌ラ屋栄陽堂」を開店。日系カナダ人や海外のカラオケサークルの客が毎月、定期的に演歌を購入するなど販売は海外にも及ぶ。振り込み手数料を代金に上乗せするのを忘れるなど、当初は失敗もあったが、今となっては良い思い出だ。

 音楽販売をめぐる時代の荒波にもまれつつ、広小路に店を構えて100年。今では「栄陽堂がなくなると困る」と言ってくれる常連客がたくさんおり、克司さんは、店を続けていくことは「社会的な使命」とすら感じている。創業100年を記念し、10~31日には大感謝祭を行う。(安倍諒)

関連写真

  • 創業100周年を迎えた「浅原栄陽堂」の吉田克司社長と妻の陽子さん

    創業100周年を迎えた「浅原栄陽堂」の吉田克司社長と妻の陽子さん

  • 創業100周年を迎えた「浅原栄陽堂」の4代目社長吉田克司さん

    創業100周年を迎えた「浅原栄陽堂」の4代目社長吉田克司さん

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