魅力・下「集う移住者」 まちマイ上士幌編
道内外から移住者が増えている上士幌。町が移住促進に力を入れており、短期の体験移住「ちょっと暮らし」の利用は道内でも「トップ10」以内(2014年度6位)の実績を誇る。人気の背景には、移住後も優しい町の人たちの姿勢がある。移住者の声を交えて紹介する。
料理を持ち寄り 月1回の「誕生会」
「いただきます」のあいさつで始まり、各自が持ち寄った郷土料理などを口にしながら会話を楽しむ。月末になると、町内の移住者を中心とした交流会が開かれている。東京や大阪など出身地の異なる上士幌移住者が一堂に会す場は十勝でも珍しい。
15年ほど前、町内に移り住んだ北上幸子さん(67)=兵庫県出身=と平岡知(さとる)さん(52)=東京都出身=が「周りにいる移住者は一人暮らしの方が多く、新年を迎えるのは寂しいだろうから」との理由で、移住者を集めたホームパーティーを企画したのが始まり。最初は少人数の集まりだったが、その後、町から「ちょっと暮らし」の業務委託を受けるNPO法人上士幌コンシェルジュの川村昌代さん(47)の協力もあって町内のモデルハウスの利用者を招くなど、10人、20人と次第に移住者の交流の輪が広がっていった。
今では開催日が主に月末で、個人宅に限らず、調理室を備えた町ふれあいプラザを使用。名称も交流会でありながらいつしか「誕生会」と呼ばれるようになった。事前に日時と場所は決まっているが、人数や各自が持ち寄るメニューは当日にならないと分からない点も楽しみの一つだ。
今月は町ふれあいプラザで27日午後6時半から開かれ、東京や広島などから移住した家族ら約20人が参加。アキアジやワカサギといった魚料理、誕生日を迎えた参加者を祝うホールケーキなど15品近く並び、自己紹介や互いに近況報告しながら交流を深め合った。
2日から28日までの期間中にモデルハウスを利用した辰巳綾子さん(42)=兵庫県在住=は神戸名物そばめしを持ち寄って初参加。「移住先の候補地なので、町民とのつながりができる良い機会になった。また参加したい」。今回も終始和やかなムードのまま、夜が更けていった。(小縣大輝)
原発を機にギタリストの旅 齊藤栄さん(48)
学生時代から音楽が大好きで、大学卒業後はギタリストとしてコマーシャルソングの演奏や、コンピューターでカラオケ用の楽曲制作などを仕事とした齊籐栄さん(48)。東京で生まれ育った齊籐さんが故郷を離れるきっかけとなったのが、東日本大震災による原発事故だった。
「毎日手にする食品の産地表記や、ニュース報道の真偽に疑問を抱き、思い悩んでいた」と齊籐さん。「人生は旅のようなもの」と妻・肇(けい)さん(49)の言葉が心に響き、移住を決意し、14年3月町営住宅に居を構えた。現在は帯広市内の職業訓練校に通っており、就活中だ。
福島県在住の子供たちを一定期間受け入れる、住民有志の「かみしほろ5000本のひまわりの会」の活動支援にも加わった。招かれる側から招く側への活動にも力を入れている。(河崎真以子)
道内各地「お試し中」 山田孝男さん(66)
妻(綾子さん=48)とともに、昨年から小樽、登別、白老、新得などで1カ月ずつ暮らした後、5月から町営住宅でお試し移住生活を楽しんでいます。その前は中国・青島の服飾関係の会社で9年間働きながら生活をしていました。その間、北海道旅行を通じ、道内で暮らしたいと思うようになりました。上士幌の暮らしは移住者らのための「誕生会」や野菜の物々交換などがあり充実しています。
健康運動「相談役」に 鍬崎亮太さん(28)
特定非営利活動法人ソーシャルビジネス推進センター(札幌)への転職を機に、今月から妻と2歳7カ月の長男と3人で子育て世帯支援団地での生活を始めました。上士幌の印象は、空気が新鮮で、とにかく食べ物がおいしいこと。健康運動指導士として町内に限らず、道内各地を巡って高齢者の健康支援に徹しています。一人ひとりのニーズに合ったプログラムを提供し、周囲から頼られる“相談役”になりたいですね。
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