画像解析で枝肉評価、帯畜大の口田教授ら法人設立
帯広畜産大学の口田圭吾教授(50)と元IT企業社長の鹿野淳さん(57)=札幌=らが、画像解析による食肉評価法の確立に取り組む一般社団法人「ミート・イメージジャパン」(関川三男理事長、通称・MIJ)を立ち上げた。牛の枝肉の切開面を撮影し横断面画像に補正する特殊なカメラと、写真画像からサシ(霜降り)の割合「脂肪交雑」を数値化して格付けするシステムの開発を目指す。2人は将来的にシステムを確立し、「世界の食肉評価の基準となれば」としている。
現在、食肉評価に世界統一の基準はなく、日本では脂肪交雑の割合を写真で示した日本食肉格付協会(東京)の「BMS」(ビーフ・マーブリング・スタンダード、1~12段階)で評価している。
しかし、格付けは目視で行うため、データに基づく客観評価にはなっていない。口田教授は「格付員の技量で評価が左右され、価格に大きく影響するため、本人のプレッシャーが大きい」と課題を指摘する。
そこで口田教授は写真撮影による客観的な評価法を模索し、2003年に道総研工業試験場などと共同で、枝肉の横断面の撮影を可能にした「ミラー型撮影装置」の開発に成功。写真画像から脂肪面積とその形状(細かさ)をパソコン上でデータ分析し、BMS値を算出する評価法を確立し、特許を出願した。
MIJは、当時東京でITシステム開発企業を経営していた鹿野さんが口田教授の取り組みを知り、「世の中の仕組みを変えることに魅力を感じた」と自ら費用を出資するなどし、昨年12月に共同設立。元畜大教授の関川さん(帯広大谷短大教授)が理事長に就任。鹿野さんが副理事長、口田教授が理事に就いた。本部は札幌で、同大地域連携推進センター内にサテライトオフィスを構えた。
同装置は肉に直接に触れることや、肉の切り口が幅20センチ以上の「広い切開面」にしか活用できず、日本で流通の95%を占める3~5センチの「狭い切開面」に対応できない課題もある。このため現在、肉に触れず、画像を即座に横断面画像に補正できる新たなカメラを開発中。今年中の完成を目指し、東京都中央卸売市場食肉市場や池田町食肉センターでの使用試験を重ね、操作の容易化や撮影精度を高めていく。
今後は全国の食肉市場などにカメラを導入し、格付け作業の一部機械化や収集データによる品種改良の効率化、さらには世界の食肉評価の基準確立を目標に掲げている。
口田教授は「日本の食肉評価は世界でもトップレベル。機械による食肉評価と併用することで、格付員の負担を減らし、より正確な評価ができる」とし、鹿野さんは「和牛の品質向上により、畜産業を盛り上げたい」と意気込んでいる。(高津祐也)
◆ミート・イメージジャパンについて
・一般社団法人ミート・イメージ ジャパン-公式ホームページ