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学生集まらず窮地に 介護福祉士養成校

介護実習に励む帯広大谷短大の学生

 帯広大谷短期大学(音更町、田中厚一学長)と帯広コア専門学校(帯広市、菅野誠校長)で介護福祉士を養成する学科の入学者が定員を大幅に下回り、両校関係者は危機感を強めている。養成校の入学者減少は全国的な傾向で、学生募集を停止する事態になれば、地域の介護職の人材確保への影響は避けられない。

マイナスイメージ先行、地域へ影響大
 「これ以上学生が減れば、何らかの手を打たなければならない」。帯広大谷短大の田中学長は、社会福祉科介護福祉専攻の入学者の減少を深刻に受け止める。

 同専攻は1988年度に定員40人で発足した。99年度に定員を80人に増やし、ピークの99、2000年度の入学者は88人に上った。減り方が目立ってきたのは06年度以降で、定員を40人に削減した12年度の入学者は30人、13年度32人。今年度は24人と定員に対する充足率は60%にとどまった。

 帯広コア専門学校も状況は同じ。1999年度に発足した介護福祉科(定員40人)の入学者は2011年度から減少が目立ち、13年度は22人、今年度は14人と充足率は35%だった。

「求人」は殺到
 一方で、両校には福祉施設から求人が殺到している。帯広大谷短大の同専攻には、昨年度の卒業生32人に対して求人件数は10・6倍の339件(うち管内73件)に上る。

 両校は入学者の減少理由について、「介護はきつい仕事」などのマイナスイメージが先行し、正しい情報が伝わっていないことを挙げる。

 例えば、安いとされる介護職の賃金。国税庁の調査では、全産業の40代前半の年収は456万円だが、帯広大谷短大が管内の町立施設や社会福祉法人に聞いた結果では、30代で450万円を超える施設があり、採用5年目で年収400万円近くを支給する法人施設もある。

 帯広コア専門学校の神山恵美子理事長は、マイナスイメージが強い背景として、介護福祉士の無資格者でも介護に従事できる職場事情を指摘する。「介護職の離職者が多く賃金が低いと見られるのは、有資格者と無資格者を同一視しているため。有資格者に限れば賃金は低くない」とする。

 離職者を減らすため職員研修に力を入れたり、法人内に“学会”を設けて職場での活動を報告したりして働く意欲を高めるなど、「大きな事業所を中心に待遇改善が進んできた」(帯広大谷短大)としている。

 両校では高校に対して待遇改善などの状況を説明しているが、理解は進んでいない。福祉・医療系では看護師に人気がさらわれ、「10人のうち9人は看護師を選ぶ」という声もある。管内の道立高校の進路担当教諭は「生徒の親が、介護職は仕事のきつさから勧めたがらない」と話す。

 帯広大谷短大では新年度の同専攻入学者数を20人前後と見込んでいる。大学事務局は「充足率が50%を割ると維持が厳しくなる」と危機感を募らせ、田中学長は「来年度の学生募集で大学としてはやれるだけのことはやった。人材の問題を地域へもアピールしたい」と話す。

 神山理事長も「人材のニーズはある。福祉施設と連携しながら介護福祉士の仕事の魅力を若い人へ伝えていきたい」としている。

高齢者は増加
 介護福祉士の養成では厚生労働省の雇用対策事業で求職者へ学費を支給する制度があり、両校に受け入れ余地がある。帯広大谷短大がある音更町は「介護職の人材難は地域への影響が大きい」として対策の検討を始めている。

 管内の福祉施設でつくる十勝老人福祉施設協議会の山本進会長(鹿追・しゃくなげ荘施設長)は「2校が人材養成をやめれば、人材難に拍車を掛ける。8年後には団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となり、介護業務は今後も増大する。十勝で人材養成が続けられるよう応援したい」と話している。(平野明)

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