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発育・体型を考慮したゲノム育種価による黒毛和種雌牛の早期選抜法 魅力ある牛群づくりをめざして

道総研畜産試験場 肉牛研究部 肉牛グループ

1.試験のねらい
 北海道ゲノム育種価評価システムは産肉能力を早期に推定するために効果的だが、現在産肉形質のみをフィードバックしていることから雌牛を保留するためには繁殖経営において重要な形質である発育や体型等についても考慮に入れた方が使いやすい後継牛を残す事ができる。
 そこで、高い産肉能力を備え、かつ健康で丈夫な雌牛を保留するため、産肉能力ゲノム育種価に加えて、発育や体型等についても考慮に入れた早期選抜法を検討した。

2.試験の方法
1)ゲノム検査を行う子牛について、体高および胸囲を測定し、どちらかが標準未満の子牛や体型が不良の子牛を除外した場合の改良効果への影響を検討した。
2)また、期待育種価に対して、ゲノム育種価がどのように変化したか調査した。
3)本試験の調査結果から発育を考慮した早期選抜を行うための具体的な方法を検討した。

3.成果の概要
1)「標準的な発育に満たない牛および体型が不良な牛」(以下、除外牛とする)を選抜対象から除外した結果、A農家では14頭中3頭の21%が除外されたが、発育を重視しているB農家では除外牛はいなかった(図1)。
2)発育、体型を考慮した、北海道ゲノム育種価評価システムを活用した後の改良効率は、枝肉重量では発育、体型を考慮しなかった場合に比べ、改良効率が20~30%低下したが、繁殖雌牛に適した牛を選抜することができた。改良効率は、A農家では発育、体型を考慮した時でもゲノム育種価未活用の場合に比較して3.0倍以上、B農家では2.2倍以上となった(表1)。
 このことから、発育や体型を考慮したモデルを利用することで標準以上の発育や体型が保たれることから、より産肉能力が高く、かつ繁殖に利用しやすい雌子牛を選抜できる事が明らかになった。
3)北海道ゲノム育種価評価システムを活用した結果、枝肉重量、脂肪交雑が高い(図2右上部分)子牛が選抜された。ゲノム育種価は高いが、発育、体型を考慮して選抜しなかった牛がいた。逆に血統や血縁の実績を重視して選抜した牛も一部見られた。
4)ゲノム検査の申請から育種価が農家(農協)に届くまでの期間が最長4か月であったことから、子牛市場出荷申請前に選抜するためには4か月齢までの申請が必要と考えられた。
5)現地では、北海道ゲノム育種価評価システムの活用により極めて優秀な個体が見つかる等の地域の改良に期待できる事例が農協担当者等に共有されたこともあり、この2年で評価数が大きく増加した。

4.留意点
1)本成果は、道内黒毛和種生産者が牛群内雌子牛の能力を用いて早期に選抜し、改良効果を高めるめに活用するとともに普及センター等指導機関が生産者指導の際に活用する。
2)本成果を用いる事により、高い産肉能力と標準(一定)の発育を備えた後継牛の選抜を行える。
3)本成果で改良された牛群を関係者に周知することが改良成果を活かすために重要と考えられる。


詳しい内容については下記にお問い合わせください
道総研畜産試験場 肉牛研究部 肉牛グループ 酒井稔史
電話 0156-64-0606 FAX:0156-64-3212
E-mail sakai-tosihumi@hro.or.jp

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