フェストロリウム品種「ノースフェスト」の耐寒性特性
道総研 酪農試験場 草地研究部 飼料生産技術グループ
1.試験のねらい
メドウフェスク(MF)とペレニアルライグラス(PR)の属間雑種であるフェストロリウム(FL)の北海道優良品種「ノースフェスト」は2024年から種子の販売が開始された。同品種は品種認定時の試験において、越冬関連形質の評価の資となる耐寒性特性検定の結果は冠氷害により判定不能であった。耐寒性特性は、越冬条件が厳しい地帯での普及に向けて重要な評価項目であるため、追加データを取得し、耐寒性特性を明らかにする。
2・試験の方法
検定草種・品種;FL「ノースフェスト」、比較草種・品種;MF「ハルサカエ」、PR「ポコロ」。試験場所;酪農試(2014-2016,2021-2023年)。処理:積雪防除区(対照区)、積雪無防除区(病害区)、除雪防除区(凍害区)。試験区の配置:各処理において、乱塊法5反復。処理方法:対照区および凍害区;フルアジナム水和剤(100g/100L水量/10a)およびチオファネートメチル水和剤(50g/100L/10a)を散布、凍害区;適宜除雪処理を行った。耕種概要;表1参照。
3.成果の概要
2016年:対照区の萌芽期は、MFおよびPRより早く、病害区および凍害区では、MFより遅く、PRより早かった(表2)。雪腐大粒菌核病の菌核着生程度は、MFよりやや多く、PRよりやや少なかった。1番草乾物収量の対照区に対する指数は、病害区で-29ポイント、+59ポイント(MFとの比較、PRとの比較、以下同様)と、MFとPRの中間であり、凍害区で-5ポイント、+54ポイントとMFに近かった。
2022年:対照区および病害区の萌芽期は、MFおよびPRより早く、凍害区では、MFより早く、PRよりも遅かった。雪腐大粒菌核病の菌核着生程度は、MFより多く、PRより少なかった。1番草乾物収量の対照区に対する指数は、病害区で-12ポイント、+37ポイント、凍害区で-23ポイント、+22ポイントと、MFとPRの中間であった。
2023年:対照区の萌芽期は、MFより遅く、PRより早く、病害区ではPRと同じ未達、凍害区ではMFより遅かった。雪腐大粒菌核病の菌核着生程度は、MFより多く、PRより少なかった。1番草乾物収量の対照区に対する指数は、病害区で-66ポイント、+10ポイント、凍害区で-58ポイント、+17ポイントと、PRに近かった。
以上から、処理の効果が高かった2023年の評価を重視し、総合的に判断した結果、MF「ハルサカエ」の耐病性・耐寒性を強・強、PR「ポコロ」の耐病性・耐寒性を弱・弱とした場合の総合判定は、耐病性「やや弱」、耐寒性「やや弱」であった(表3)。本成果は、北海道の草地における草種、品種選択の参考となる。
4.留意点
本成績は、フェストロリウム新品種候補「ノースフェスト(北海1号)」(平成28年度北海道農業試験会議 普及推進事項)の成績の補遺である。本品種の普及対象地域は、北海道全域、ただし根釧地域の一部などの著しい凍害や冠氷害の発生が懸念される地域を除く。
詳しい内容については下記にお問い合わせください
道総研 酪農試験場 草地研究部 飼料生産技術グループ 田中常喜
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