競合力が穏やかなアルファルファ新品種「Karlu(カール)」
道総研酪農試験場 草地研究部 飼料生産技術グループ
1.試験のねらい
アルファルファ(AL)は嗜好性が高く、タンパク含量およびミネラル含量が豊富であり、アカクローバよりも永続性に優れることから、道内の基幹マメ科牧草として、主にチモシー(TY)を主体とする混播利用で普及している。しかし、定着後に生育が旺盛となり競合力が強くなると、TY が混播相手の場合、TY の生育を抑圧・衰退させ、良好な草地を維持できない。一方、競合力が穏やかで混播適性の高い品種を栽培することで、良好な植生の維持が期待できる。北海道全域での栽培利用を目的として導入されたAL 系統の諸特性を明らかにし、北海道優良品種選定の資とする。
2.試験の方法
AL「Karlu」は、エストニアのエストニアンクロップリサーチインスティチュートが育成した品種である。雪印種苗株式会社が導入し、2014~2016年に北海道研究農場において予備検定試験を実施し、生育が緩慢なため収量性は劣るが、TY 中生品種との混播適性が優れると考えられたことから、2018~2021年に道内5場所において品種比較試験を実施した。
3.成果の概要(標準品種「ハルワカバ」と比較)
1)早晩性:標準品種と同じ早生に属する。単播区(北農研)における1番草の開花始は2ヶ年平均で、6月19日である(表1)。
2)黄花出現割合:2番草で62%出現する(表2)。
3)混播適性:混播区の3ヶ年合計乾物収量において牧草合計は並からやや少ないものの、TY で多く(表3)、乾物マメ科率は低い(表2)。AL 被度は2年目から3年目にかけて常に低い一方、TY 被度は常に高く推移し、TY を抑圧・衰退させづらい(図1)。以上のことからTY 中生品種との混播適性は高い。
4)競合力:AL 被度は低く推移し(図1)、2番草草丈は低く(表2)、競合力は穏やかである。
5)越冬性:越冬性は劣る(表1、2)。
6)永続性:単播区(北農研)におけるAL 年間合計乾物収量の3年目/ 2年目収量比は多い傾向がある(表1)。
7)耐病性:そばかす病罹病程度は少なく(表2)、葉枯れ性病害罹病程度は同程度である(表2)。バーティシリウム萎凋病抵抗性検定の結果は強と判定された(表1)。
8)収量性:混播区3カ年5場所平均におけるTY とAL の年間合計乾物収量は標準比97%であり(表3)、並からやや少ないもののTY 収量は5場所平均で約20ポイント高い(表3)。
4.留意点
なし。
詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研酪農試験場 草地研究部
飼料生産技術グループ 中村直樹
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