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早く枯れる症状が発生していませんか?-半身萎凋病が要因です-

道総研 北見農業試験場 研究部 生産技術グループ

1.背景と目的
 オホーツク地方では、でん粉原料用ばれいしょが早期(8月下旬~9月初旬)に黄化・枯凋する症状が顕著で、激しい圃場では明らかな減収も認められている。そのため生産現場では、原因解明と被害低減対策を求める要望が強い。本症状の原因はジャガイモ半身萎凋病とジャガイモシストセンチュウ(以下、Gr と省略)およびネグサレセンチュウが複合的に関係している可能性がある。
 そこで、早期枯凋症状と半身萎凋病、Gr およびネグサレセンチュウとの関係および半身萎凋病に対する品種間差を明らかにする。

2.試験の方法
1)早期枯凋症状に関与する要因の検討
2)線虫類が半身萎凋病に及ぼす影響と半身萎凋病に対する品種間差
3)半身萎凋病に対する殺線虫剤の効果の検討

3.成果の概要
1)3カ年で63圃場の実態調査をしたところ9月下旬まで枯凋期に達しない圃場があるなか、20圃場で8月下旬~9月初旬に60%以上の枯凋率となり、早期枯凋症状が確認された。それらの圃場では半身萎凋病の発生程度が高く、早期枯凋症状の主な要因であった(図1)。また、2020年の2圃場(「アーリースターチ」作付圃場)では黒あざ病の多発生による早期枯凋症状が確認された(図1)。
2)半身萎凋病の発生程度や枯凋率には品種間差があり、「コナヒメ」および「コナフブキ」作付圃場で他品種作付圃場と比較して発生程度が高く、枯凋期が早まった(図1)。また、半身萎凋病の発生程度および枯凋率と過去10年間のばれいしょが作付けされた回数との間に一定の傾向は認められなかったが、主にばれいしょ、てんさい、秋まき小麦(または春まき小麦)で輪作を実施しており、輪作期間が短かった(データ省略)。
3)ほとんどの圃場から微小菌核が検出され、高密度(10個/ 乾土g 以上)圃場も4割認められ、1994~1995年の調査時より検出割合が3倍以上に増加し、半身萎凋病の発生が拡大していた(表1)。また、半身萎凋症状を呈する個体からはVerticillium 属菌が分離され、その優占菌種はV.dahliae であった(データ省略)。
4)2020年において植え付け前のGr 密度と半身萎凋病の発生程度には正の相関関係が認められたが、ネグサレセンチュウについては両年とも一定の傾向は認められなかった(図2)。Gr およびネグサレセンチュウが半身萎凋病に及ぼす影響をポット試験により検討した結果、線虫類が半身萎凋病の発病を助長する場合があったが、助長の有無は年次間や品種間で異なった。一方、半身萎凋病の発病程度は品種間で明らかに異なった(表2)。これらのことから、半身萎凋病に与える影響は線虫類よりも品種の方が大きいと考えられた。
5)半身萎凋病に対する抵抗性を累年評価で「パールスターチ」を“強”、「コナユタカ」、「コナフブキ」、「サクラフブキ」を“中”、「コナヒメ」を“弱”と判定した(表2)。
6)殺線虫剤処理はネグサレセンチュウに対する防除効果が認められた。一方、半身萎凋病に対して植え付け前にGr が優占した1事例を除き、ネグサレセンチュウが優占した4事例では発病軽減効果が低いため(データ省略)、半身萎凋病による早期枯凋症状に対する殺線虫剤は有効な防除手段とはならないと判断した。
7)以上のことから、半身萎凋病による早期枯凋症状を軽減するためには豆類の導入等の適正な輪作体系を構築し、微小菌核密度を低く維持するとともに、抵抗性の強い品種を作付けすることが重要であると考えられた。

4.留意点
1)でん粉原料用ばれいしょ品種を栽培する際に品種選択の参考とする。



詳しい内容については、次にお問い合わせください。
道総研北見農業試験場 生産技術グループ
電話(0157)47-2146
E-mail:kitami-agri@hro.or.jp

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