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とうもろこしサイレージに含まれる かび毒「デオキシニバレノール」の迅速測定技術

道総研 畜産試験場 基盤研究部 飼料環境グループ

1.試験のねらい
 デオキシニバレノール(DON)は、赤かび病菌(Fusarium graminearum)によって産生されるかび毒であり、とうもろこしサイレージ(CS)から高頻度で検出される。飼料中DON 濃度には管理基準(反芻動物用:4mg/kg 現物,その他家畜等用:1mg/kg 現物)が設定されている。CS 中のDON は、乾燥粉砕試料を用いてELIS Aキットにより測定できるが、ELIS A操作の煩雑性や試料の乾燥に一晩を要する等の課題があり、生産現場で活用可能な簡便な手法の確立が求められている。本試験では、市販イムノクロマトキットを活用し、CS 生試料(生CS)を用いた簡易迅速検査法の確立を目指す。

2.試験の方法
(1)生CS を用いたDON 分析のための抽出条件の検討
 生CS からDON 分析に適用可能な抽出液を得るための調製法(生CS 抽出法)を検討する。
(2)市販イムノクロマトキットを活用した生CS 中DON の簡易スクリーニング法の構築
 定量キット(QuickScan DON Flex,ENVIROLOGIX 社)および定性キット(RIDA QUICK DON,R-Biopharm 社)を用いた、生CS 中DON 検査のプロトコルを作成する。

3.成果の概要
(1)生CS 100g に蒸留水を500ml 加え、ジュースミキサーで3分間攪拌後にガーゼとろ紙を用いてろ過したろ液をpH 6~8に調整することで、ELISA キットを用いたDON 分析に適用可能となる。本試験で確立した生CS 抽出法を図1:①~⑥に示した。

(2)-(1)市販のイムノクロマトキットを活用した生CS 中DON の簡易スクリーニング法を図1に示した。供試イムノクロマトキットでは、生CS 抽出法で得られたろ液のpH は、キット付属Buffer(抽出液)との混合により中性付近に調整されるため、ろ液自体のpH 調整は不要である。

(2)-(2)定量キット付属Buffer 100μL に、生CS 抽出法(図1:①~⑤)で得られたろ液100μL を加え、キットマニュアルに従い反応させることで、公定法による分析値と概ね近似した値が得られる(r2=0.989)。

(2)-(3)定性キット付属の抽出液を用いて、生CS 抽出法(図1:①~⑤)で得られたろ液を管理基準に合わせたスクリーニングレベルに希釈して反応に供し、テストラインが明瞭に現れたものを陽性と判定することでDON 汚染レベルを正しく判定できる。抽出液としては水道水を用いても良い。

(2)-(4)図1のスクリーニング法はCS 原料草にも適用できる。

(2)-(5)1検体当たりの分析所要時間は、前処理(計量~ろ液採取)が約8分、測定が定量キットでは約5分、定性キットでは約7分であり、約18時間の乾燥処理を要する従来法(ELISA)に比べ極めて迅速である。

(2)-(6)キットの単価(税抜,参考価格)は、定量キットは960円/ 検体、定性キット1,700円/ 検体。

4.留意点
(1)管理基準を超えた飼料は、TMR や総給与飼料中の濃度が管理基準値を超えないように配合割合を調整する。
(2)本試験で供試した以外の市販キットへの適用に当たっては妥当性の検証が必要である。


詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研畜産試験場 基盤研究部 飼料環境グループ 湊 啓子
電話(0156)64-0622 FAX(0156)64-6151
E-mail minato-keiko@hro.or.jp

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