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たうんトーク「化石研究家 井上清和さん」

「化石研究に終わりはありません。私にとってはライフワークです」と語る井上さん

発掘は終わりなき探求
最古の二枚貝 名に「驚き」

 浦幌町川流布(カワルップ)地区にある約6000万年前の地層「富川層」で2010年11月に発見された二枚貝の化石は、世界最古のタテヒダシャクシガイ属の新種と判明した。学名「ミオネラ・イノウエイ」(和名はイノウエタテヒダシャクシ)は、発見者にちなんで命名された。発見した帯広市のアマチュア化石研究家の井上清和さん(61)に発見の経緯や化石研究の魅力などについて聞いた。(文・写真、内形勝也)

 -化石研究を始めたきっかけは。
 小学1年生のころ、酪農をしていた実家が牛舎新築のため敷地内に運び込んだ砂利の中に化石を発見、夢中になったことが始まりです。29歳の時に十勝でアンモナイトを見つけたいとの思いが膨らみ、独学で研究を始めました。

 -研究はどのように行っていたのですか。
 最初は地質図を持っていなかったので、図書館で書き写し、浦幌町厚内で半海棲の哺乳類「デスモスチルス」(束柱類)が発見された資料を見て現地に行くなどしました。

新種続々と発見
 -思い通りに化石は発見できたのですか。
 化石研究にのめり込んだのですが、アンモナイトは発見できず、違う化石を幾つも見つけました。ですが、それが何なのかが分かりませんでした。何人もの研究者に「論文を送ってもらいたい」とお願いし、複数の研究者から届いたすべて英語の論文を辞書を片手に読んでみました。3年ほどたったころに、帯広百年記念館の学芸員のアドバイスで「十勝の自然史研究会」(藤山広武会長)に入り、1990年代に上越教育大学(新潟県)の天野和孝教授(現同大特任教授)と知り合いました。程なく浦幌町厚内で絶滅した鰭脚類(ききゃくるい)の「アロデスムス」の新種化石や、大樹町歴舟川で絶滅したヒゲクジラの新属新種化石「タイキケトゥス・イノウエイ」を発見するなど、3000件ほどの化石を発掘しました。

10年経て発表
 -タテヒダシャクシガイ属の新種化石はどうやって発見したのですか。
 浦幌町活平地区周辺は発掘ポイントなのでよく足を運んでいました。少し離れた川流布地区にも似たような地層があり、化石が入った石灰質団塊を見つけました。すぐに上越教育大の天野教授に渡し、発見から10年後の今年、天野特任教授が学名と和名を命名し、米国の貝類学雑誌に論文を発表しました。ヒゲクジラの新属新種を発見した際に学名に自分の名前が付いたことはあったのですが、学名と和名の両方に自分の名前が付いたので驚きました。

 -今後の目標は。
 化石発掘は面白くて時間があっという間に過ぎてしまいます。見つけたら、それが何かを知りたいし、何か分かれば、次を探したくなります。化石研究に終わりはありません。私にとってはライフワークです。これからも自分の探求心に従って化石研究を続けていきたいです。

<いのうえ・きよかず>
 1958年生まれ。釧路管内厚岸町出身。清水高校卒業後に陸上自衛隊に入隊。除隊して帯広市内の「大和写真館」(今年閉店)に入社。帯広市に住み、仕事の傍ら独学で化石研究を始め、「十勝の自然史研究会」に入会。絶滅した鰭脚類(ききゃくるい)の新種化石や新属新種のヒゲクジラ化石などを発見した。

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