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足腰の強さみせた十勝農業(酪農・畜産) 農業TOKACHI

暑熱対策をして夏の乳量低下を防ぐ取り組みも広がる

<酪農>
生乳生産、前年超えへ 自給飼料の作柄に不安も

 今年の管内生乳生産量は、年初から前年同月比4~5%と高い伸びを維持してきた。2017年産の牧草の品質が良かったことが背景だ。加えて、18年度はチーズ向け乳価が大幅に引き上げられたことも酪農家の追い風となっている。搾乳ロボットなど新たな投資に踏み切る動きもある。

 18年度の管内生乳生産の目標値は前年度実績を4%上回る119万3600トンだった。8月までは目標値をクリアするペースで生産が伸びていたが、9月の胆振東部地震に伴う停電で増産ペースがいったん鈍った。9月の生産量は1.3%減と13カ月ぶりに前年同月を下回った。

生乳の生産量-十勝分

 もっとも停電解消後は乳牛の体調回復が進み、被害の長期化は避けられたようだ。乳業メーカーや酪農団体で構成するJミルク(東京)の予測によると、18年度の道内生産量は前年度比0.6%増。十勝は8月まで道内でも高い伸びを示してきただけに、18年度の管内生産量も前年を上回り、過去最高を更新する可能性が高そうだ。

 気がかりなのが今年産の自給飼料の出来栄え。1番牧草は収穫時期の6月に雨が多く、収穫の遅れから品質が昨年より劣るところが多い。トウモロコシも生育の遅れが目立った。今秋以降、乳牛の餌が今年産に切り替わっており、乳量低下を招く恐れがある。必要な栄養素を補おうと飼料の外部調達を増やすと、酪農家のコスト負担が増す。

ベトナム人を中心に外国人を受け入れる酪農家は多い

 外国人労働者の受け入れ拡大に向けた政府の動向を注視する酪農家も多い。酪農は明確な農閑期がなく、大規模法人を中心に人手をベトナム人などに頼る傾向が強まっているからだ。

 政府が法改正案で示した新たな在留資格「特定技能1号」では最長5年の就労が可能。これまで活用してきた外国人技能実習制度は3年のところが多く、実質的な期間延長となりそう。人手不足が増産意欲に水を差すことがないような政策が求められている。

競りでは引き続き高値で取引されている

<肉用牛>
和牛人気を追い風に増産続く 輸出を視野に新ブランドも

 管内の畜産で伸びが顕著なのが肉用牛だ。十勝農協連の調査によると、2017年12月時点で管内の牛と豚の飼育頭数は初めて50万頭を突破。このうち肉用牛は約21万6000頭と過去10年で5万頭以上増えた。農林水産省がまとめた全道の頭数(17年2月)と比べると、道内の42%を占めている。

 管内では「素(もと)牛」と呼ぶ生後1年未満の子牛が多いのが特徴だ。後継者不足などから道外の生産基盤が弱まっていることを背景に、十勝産の子牛の引き合いは強い。農畜産業振興機構(東京)がまとめた17年度の黒毛和種の子牛取引状況によると、ホクレン十勝地区家畜市場(音更)が取引頭数で全国一となった。

 黒毛和種は長く九州が主産地だったが、ここ数年は十勝地区市場の存在感が増している。生産基盤が強固であるほか、乳牛に黒毛和種の受精卵を移植し、効率的に生産する手法が定着しつつあることも大きい。

十勝和牛のブランド認知度も向上している(9月の「とかちマルシェ」)

 さらに、国内外の和牛人気を受けて取引価格が高水準で推移していることが、農家の生産意欲を高めている。ノベルズ(上士幌町、延與雄一郎社長)を中核とするノベルズグループなどは大規模化を進めている。

 来年以降も増産傾向が続くとの見方は多い。トヨニシファーム(小倉修二社長)など帯広市内の畜産農家4戸は、国の畜産クラスター事業の補助金を活用し、年間400頭前後の和牛を生産する大規模牧場を20年にも開設する計画。事業費は約20億円を見込んでいる。

 海外でも十勝産和牛の評価は高まっている。5月に来道した中国の李克強首相、王毅国務委員兼外相の歓迎晩さん会では、十勝和牛を蒸し焼きにした「ポワレ」が提供された。王外相はその味を絶賛したという。

 こうした評判を受け、帯広市内で宿泊施設・レストランを運営する十勝ヌップクガーデン(吉川広司代表)は和牛の新ブランド「十勝ぬっぷく和牛」を立ち上げ、台湾などへの輸出を検討している。

 牛肉の最高ランク「A5」の中でも特にサシ(霜降り)が多いものに絞って販売する。6月に台湾の食品見本市で試食してもらったところ、大人気で長い行列ができたという。飼育頭数の増加だけでなく、ブランド力も高まることで十勝の「肉牛王国」の座はより強固なものになりそうだ。

十勝管内の牛豚飼育頭数

黒毛和種の子牛取引頭数ランキング


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